研究課題/領域番号 |
12J03886
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山下 真里 東北大学, 大学院文学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 文字・表記 / 異体字 / 俗字 / 略字 / 字体 / 字種 / 近代教育漢字字体資料 / 手書き文書 |
研究概要 |
本研究課題の目的は、1【近代に異体字が派生・展開・衰退する要因を明らかにする】、2【近代における通用字体を把握する】という2つの視点によって、近代の漢字字体の特徴を明らかにすることである。本年度は以下に示すところまで研究を進めることができた。 1-1「銭」の異体字から見る異体字の置換可否に関する考察 「銭」の異体字「銭一金」という字体は、金銭単位として使用される場合は「銭」と置き換え可能であるが、「銭湯」という場合に「銭」と置き換えることはできない。すなわち、典型的な異体字とは異なり、必ずしも異体字を相互に置き換えることができないのである。このような「銭一金」という字体について、具体字の中での位置づけを考察した。この内容は雑誌『日本語の研究』9-4に掲載された。 2-1近代教育漢字字体資料の画像データベース作成 昨年度は近代教育漠字字体資料のテキストデータベースを作成したが、本年度はそれをもとに画像データベースの作成を行った。このデータベースが完成することによって、本研究課題の目的である近代通用字体の体系的把握が可能となる。現在までに37資料中34資料の画像データベース化を終了させている。 2-2近代教育漢字字体資料に見られる字体範疇「俗字」の考察 2-1で作成した近代教育漢字字体資料の画像データベースを利用して、近代教育漢字字体資料に見られる字体範疇「俗字」の内実を明らかにした。その結果「俗字」には「略字に並置される俗字」と「略字を包括する俗字」の2つのタイプが存在すること、前者の俗字の多くは、かつて標準字体であったことあるものであり、後者の俗字は、他の資料において略字や古字といった別の字体範疇に属するものが見られることが明らかになった。このことは訓点語学会で口頭発表を行い、雑誌『訓点語と訓点資料』132に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
近代教育漢字字体資料について、当初の計画以上に多くの資料を発掘・整理できているからである。新たに発掘した資料についてもテキストデータベース化をほぼ終了し、画像データベースについても37資料中34資料完成させている。 また、「銭-金」という字体の調査を通して、異体字のタイプに関する考察も行うことができたからである。
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今後の研究の推進方策 |
今後も研究計画に沿って研究課題を進める予定である。 具体的には、近代教育漢字字体資料の画像データベースを完成させ、それを利用して近代通用字体を明らかにする。また、昨年度は字体範疇「俗字」についての考察を行ったが、今後は「略字」など他の字体範疇についても調査を行い、近代に用いられていた字体範疇について明らかにする。さらに、具体字の衰退状況についての調査も行う予定である。
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