研究課題/領域番号 |
12J03887
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研究機関 | 独立行政法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
森岡 優志 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境変動領域, 特別研究員(PD)
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キーワード | 亜熱帯ダイポール / 海面水温 / 経年変動 / 混合層 / 亜熱帯高気圧 |
研究概要 |
亜熱帯ダイポールは、南インド洋と南大西洋に存在する気候変動現象で、正の位相の時には、海盆の南西部に平年より暖かい海面水温を、北東部に冷たい海面水温を伴います。亜熱帯ダイポールは、亜熱帯高気圧の変動を受けて海洋表層の混合層が変動し、日射による混合層の加熱が変化することで発達します。しかし、亜熱帯ダイポールを発生させる亜熱帯高気圧の変動の原因については未だよく分かっておりません。 そこで、中解像度大気海洋結合モデル(UTCM)を用いて2つの実験を行い、南インド洋の亜熱帯ダイポール(IOSD)を引き起こすマスカリン高気圧の変動の原因について調べました。まず始めに、南インド洋以外の海面水温の経年変動を抑えた実験を行ったところ、IOSDの発生頻度は経年変動させた実験に比べ著しく減少していました。これは、南インド洋以外の海面水温変動に伴う大気のテレコネクションが、IOSDの発生に重要な役割をしていることを示唆しています。次に、南インド洋と熱帯太平洋以外の海面水温の経年変動を抑えた実験を行ったところ、IOSDの発生頻度が1つ目の実験に比べ増加していました。これは、熱帯太平洋の海面水温変動に伴う大気のテレコネクションが、IOSDの発生に寄与していることを示唆しています。 一方で、亜熱帯ダイポールと思われる気候変動現象が南太平洋についても確認されました。この現象は、正の位相の時には、南太平洋中央部の東側に平年より冷たい海面水温を、西側に平年より暖かい海面水温を伴っていました。この海面水温の変動は、南インド洋や南大西洋の亜熱帯ダイポールと同様に、亜熱帯高気圧の変動に伴う混合厚の変動が日射による加熱を変化させることにより生じていました。また、南太平洋の亜熱帯ダイポールを発生させる亜熱帯高気圧の変動が、オーストラリアの南方で励起されたロスビー波の伝播と関係していることが分かりました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまで明らかにされていなかった南インド洋の亜熱帯ダイポールの発生要因について、中解像度大気海洋結合モデルを用いて実験を行い、熱帯太平洋の海面水温変動からの影響を示唆することができました。また、亜熱帯ダイポールが南太平洋にも存在することを初めて明らかにすることができました。これらの研究成果を国内外の学会で発表し、論文2編にまとめることができたため、当初の計画以上に研究が進展しています。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、南インド洋の亜熱帯ダイポールの発生について熱帯太平洋の海面水温変動からの影響が明らかになりましたが、熱帯インド洋や熱帯大西洋など他の熱帯域の海面水温変動からの影響は未だよく分かっていません。また、南半球の中高緯度に存在する気候変動現象「南極振動」との関係も示唆されましたが、その詳細を調べる必要があります。今後は、各海盆の亜熱帯ダイポールをよく再現している高解像度大気海洋海氷結合モデルを用いて実験を行い、熱帯域の気候変動現象と中高緯度の南極振動が相対的にどの程度亜熱帯ダイポールの発生に関わっているか、物理メカニズムを詳しく調べていきます。
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