研究課題
本年度はAMPK-HSP72経路による筋肥大の抑制が、タンパク質合成経路の抑制を介したものであるのか、あるいはタンパク質分解経路の亢進を介したものであるのかについて明らかにするために検討を行った。タンパク質合成経路への影響はAktおよびp70 S6 Kinase (p70S6K)、タンパク質分解経路への影響はmuscle-specific RING-finger1 (MuRF1)の動態により評価した。AMPK活性化剤であるAICARを含有した培地中で、分化させたマウス由来筋芽細胞(C2C12)をインキュベート(0.5mM、24h)したところ、Akt活性の指標であるAktSer473リン酸化は変化しなかったが、p70S6K活性の指標であるp70S6KThr389リン酸化が減少した。またp70S6Kリン酸化減少は、RNA干渉法を用いてAMPKタンパク質発現を80%ノックダウンさせた細胞では緩和された。一方、HSP72タンパク質発現を70%ノックダウンさせた細胞では、AICAR刺激によるp70S6Kリン酸化減少は不変であった。AICAR刺激による筋肥大の抑制はAMPKあるいはHSP72のいずれを消失させた細胞においても緩和された。AICAR刺激によりMuRF1mRNA発現が増加し、この増加はAMPKをノックダウンさせた細胞では惹起されなかった。またHSP72をノックダウンした細胞においてもAICAR刺激によるMuRF1 mRNA発現の増加は見られなかった。以上から、AMPK-HSP72経路を介した筋肥大の抑制に、タンパク質合成経路の抑制は関与しておらず、タンパク質分解経路のシグナル亢進が関与している可能性が示唆された。上記研究の結果は、AMPKが筋量を調節するメカニズムについて、AMPK-HSP72axisを介したタンパク質分解経路の調節機構が存在していることを明らかにしたものである。また上記に加え、骨格筋特異的にAMPK活性を低下させた遺伝子組み換えマウス(AMPK-DN)を用いた検討を平行して行っており、現在までのところ、AMPK-DNマウスでは後肢懸垂処置による廃用性筋萎縮進行が抑制されるという結果を得ている。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、研究計画に記載した動物実験の検討が進行し、仮説に沿った結果が出ている。また、培養細胞を用いた検討により、メカニズムの解明も進んでおり、順調に研究が進展していると考える。
引き続き、生体を用いた検討を進行し、培養細胞にて明らかになった結果を基盤に、AMPKによる骨格筋量調節のメカニズムを詳細に解明していく。
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