研究概要 |
平成25年度においては、平成24年度の成果を踏まえ、(1)肝細胞内TXA2下流シグナル経路による感染性HCV粒子形成制御の解明及び{2}TXAS阻害剤耐性HCV株ゲノムに認められた1塩基置換のHCV生活環における意義の解明を目的として研究を行った。 研究計画1については、過剰なTXAS活性が十分に認められる細胞株を樹立できなかったため研究計画を修正した。修正後の研究計画ではTXAS阻害活性を持ちPGI2受容体(IP)アゴニストONO1301処理群とTXAS阻害活性を持たないBeraprost処理群との間で遺伝子プロファイルの比較を行った。マイクロアレイ解析から発現変動の認められる遺伝子群の抽出を進めた結果、acyl-CoA synthetase short-chain family member 1 (ACSS1)やphospholipase D family, member 4 (PLD4)といった脂質代謝制御遺伝子が含まれており、先行研究同様にHCV感染性における脂質代謝の重要性を示唆する結果が得られた。今後は、発現変動遺伝子を標的としたsiRNA処理時においてHCV感染性への影響を検討し、HCV感染性獲得メカニズムの詳細について明らかにしていく予定である。 研究計画2については、まずHCV全ゲノムシークエンスを再現性良く実行するためのRNA抽出、RT-PCRによる増幅、DNA断片のシークエンスに関して条件検討を修士学生の長谷川輝と共に行った。その結果、JFH1株のゲノムの95%程度を安定してシークエンスすることが可能となった。一方JFH1株を用いたヒト肝細胞キメラマウスへの感染実験ならびにTXAS阻害剤投与に関しては、現在感染させるHCV量ならびに薬剤投与量を含めて検討中である。今後は、まずキメラマウスにおいてTXAS阻害剤投与後に変異を獲得し感染性を再び獲得したHCVゲノム変異を同定することを目的としている。同定した変異のHCV感染性粒子形成における機能的意義について更に検討を進める予定である。
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