1.石灰藻に対するリン酸塩負荷と高水温の複合効果に関する実験 沖縄沿岸域の重要なベントスであるサンゴモの一種Porolithon onkodesに着目し、高水温とリン酸塩負荷の影響を調査した。このサンゴモはサンゴ礁海域に多く見られ、海底基盤の形成や新規加入サンゴの固着基盤として重要な役割を果たしている。2013年9月、沖縄本島沿岸域において、無節サンゴモP. onkodesを採取し、約3 cm四方に断片化した後、琉球大学熱帯生物圏研究センター瀬底研究施設内で実験を行った。サンゴモの石灰化速度は、30℃では有意な変化は見られなかったが、32℃では著しく減少した。近年、沖縄近海の夏の海水温が30℃に達していることを考えると、将来的に海水温がさらに上昇すれば、サンゴモの成長速度は大きく減少することが懸念される。
2.新規加入付着藻類に対する海洋酸性化の影響評価実験 地球規模で進行する海洋酸性化が、サンゴ礁生態系の底生付着藻類に与える影響を評価することを目的として、琉球大学熱帯生物圏研究センター瀬底研究施設内で2か月間の屋外水槽実験を行った。ポリカーボネート製のボルトを多数沈めたガラス瓶に、海洋酸性化の条件として実験区(pCO2: 1000 ppm)と対照区(pCO2: 400 ppm)の2種類の実験用海水を連続的に供給し続けた。実験の結果、海水の酸性化によってボルトに付着する石灰藻の石灰化速度は約30%減少することが示された。沖縄近海の石灰藻の炭酸カルシウム生産速度が将来的に減少することが懸念される。その一方、ボルトに付着する有機物量やクロロフィル量などを測定した結果、酸性化による有意な差は見られなかった。石灰を沈着しない底生藻類については、酸性化の影響を受けにくいことが示唆された。
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