研究課題
背景:便失禁による皮膚障害モデルラットを用いた研究により、便失禁による皮膚障害は、毛包からの角化細胞の遊走を促進する介入により治癒を促進できる可能性が示唆された。その介入法として、アシル化ホモセリンラクトン(AHL)に着目した。AHLの一つであるN-(3-オキソドデカノイル)-L-ホモセリンラクトン(3-oxo-C12-HSL)は、角化細胞遊走促進能を有する一方で、緑膿菌感染を促進する分子でもあるため、便に曝露した皮膚に適用するのは困難である。AHLにはアシル鎖長の異なる分子種が存在するが、それらのAHLの創傷治癒に及ぼす影響は十分に検討されていない。目的:アシル鎖長の異なるAHL(3-oxo-C8-HSL、3-oxo-C10-HSL、3-oxo-C14-HSL)の角化細胞遊走促進能を検証した。方法:1) ラット表皮角化細胞株(FRSK)をスクラッチアッセイに供した。スクラッチ直後に細胞培養液を各AHLおよび溶媒(DMSO)を含む培養液に交換し、経時的にスクラッチ面積減少率を算出した。2) 6ヶ月齢雄性SDラットの除毛3日後の背部皮膚に、便失禁による皮膚障害再現処理(タンパク質分解酵素溶液含有アガロースゲル4時間貼付の後、緑膿菌培養液30分塗布)を実施した。皮膚処理24時間後、AHL溶液あるいは溶媒(DMSO)を含ませたガーゼを貼付した(24時間)。その後、処理部位を継時的に観察した。結果:1) スクラッチ72時間後、3-oxo-C8-HSL、3-oxo-C14-HSL群では、溶媒群と比較して面積減少率が有意に大きく、これらのAHLが角化細胞遊走促進能を有することが明らかになった。2) AHL処理に3-oxo-C14-HSLを用いた結果、肉眼的所見として、AHL処理群では痂疲様所見がDay 3までのみに認められたのに対し、溶媒群では痂疲様所見がDay 5まで持続した。痂疲様所見は、治癒過程における毛包から伸長した角化細胞層により病変部位が分断された所見と考えられるため、AHL処理群では角化細胞層の伸長がより早い段階で生じている可能性が示唆された。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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