SiC基複合材料を原子力材料として使用する際には、中性子照射下の強度を適切に評価するとともに、高精度に予測することが求められている。 本研究の目的は、中性子照射下強度予測のために、その強度支配因子である残留応力に影響を及ぼす構成要素のスウェリングと照射下クリープ機構を明らかにすること及び、スウェリングとクリープデータから残留応力解析を行いそれを用いた照射下強度予測すモデルを構築することである。 本年度は、東北大学金属材料研究所にて中性子照射材の引張り試験及びクリープ実験を実施した。この実験結果及び、前年度に得られた知見を基に、SiC複合材料の繊維、マトリックス、界面の照射後特性からSiC複合材料の中性子照射下での強度予測モデルを構築し、そのモデルの妥当性を中性子照射したSiC複合材料の引張試験結果と比較することで検証した。更に、強度予測モデルを用いて、高線量中性子照射下におけるSiC複合材料の強度予測を行った。低線量域でのモデルの妥当性が示されたことから、中性子照射下でのSiC複合材料の強度特性に関して、現象論的理解を深め、その機構論を提示し、高線量での照射効果を予測することが可能となった。また、それらの予測に基づき、耐中性子照射特性を向上させるためのSiC複合材料の材料設計指針を示し、次世代原子炉材料としてのSiC複合材料の今後の開発に重要な情報を得ることができた。
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