本研究では、植物の成長や生存戦略を支えるエネルギー恒常性の維持機構において、体内栄養リサイクル系であるオートファジーが担う生理的意義と、その制御の分子メカニズムについて明らかにすることを目的とし研究を行っている。 本年度は、前年度までに整備したシロイヌナズナー重、二重変異体系統を使用し、ミトコンドリア内で分岐鎖アミノ酸の異化代謝を担う酵素とオートファジーの二重変異体が、それぞれの一重変異体よりもさらに糖欠乏耐性が低下することを見出した。オートファジーによるタンパク質分解から派生する分岐鎖アミノ酸が異化されることが、重要なエネルギー恒常性維持機構となっている可能性が示されたと言える。また前年度に構築したイネにおけるオートファジー可視化法を適用し、過去にシロイヌナズナで得られていた知見と同様に、イネ葉においても暗処理によるエネルギー欠乏でRubisco-containing body (RCB)/オートファジーが活性化されることを明らかにした。 また、シロイヌナズナ葉においてRCB形成の誘導様式について解析を行い、紫外線照射時にはRCBによる部分分解ではなく、クロロファジーと命名した葉緑体丸ごとの全分解がより活発に起きることを明らかにした。オートファジー欠損変異体の葉では、紫外線照射後のクロロファジー依存的な葉緑体数の減少が起きておらず、構造が異常な葉緑体が頻繁に観察され、紫外線障害に対する耐性も低下していた。よって、紫外線障害により機能が失われエネルギーを獲得できなくなった葉緑体については、クロロファジーで除去することにより細胞機能への更なる傷害を防ぐ機能があることが示唆された。
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