研究課題/領域番号 |
12J03948
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
波多野 浩士 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 特別研究員(PD)
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キーワード | 前立腺癌 / アンドロゲン / DNAメチル化制御 / シアル酸転移酵素 / 不活化センダイウイルス |
研究概要 |
不活化センダイウイルス(HVJ-E)の受容体であるガングリオシド、GD1aの前立腺癌における発現の意義を解明すべく、GD1aの合成酵素であるシアル酸転移酵素(ST3Gal)の前立腺癌における転写制御について研究を進め、前立腺癌の悪性度と相関する転写因子であるRe1BがST3Ga1の転写を制御することを発見した。本研究では、前立腺癌におけるST3Galのプロモーター領域のCpG isiandのDNAメチル化状態の解析を行い、アンドロゲンによるその制御機構について検討を行った。 メチル化特異的PCR法を用いてST3GalのCpGメチル化状態を検討したところ、アンドロゲン非依存性前立腺癌細胞(PC3、DU145)ではアンドロゲンの有無にかかわらず脱メチル状態に維持されていた。一方、アンドロゲン感受性前立腺癌細胞(LNCap)では低アンドロゲン培養下ではメチル化状態であったが、アンドロゲン投与により脱メチル化された。また、このアンドロゲンによるST3GalのCpGメチル化制御は抗アンドロゲン剤であるビカルタミドの投与により抑制された。これらの結果から、アンドロゲン感受性前立腺癌細胞においてはST3Ga1の転写にアンドロゲンが関与しており、アンドロゲンによりST3Ga1のCPGメチル化が調節されることを見出した。 前立腺癌の進展に遺伝子のCPGメチル化制御が関与することはすでに報告されているが、そのCPGメチル化制御にアンドロゲンが関与することを示唆する発見となった。本研究成果は臨床上重要な課題である前立腺癌治療におけるHVJ-E治療の有用性を追求するにあたり非常に重要であるとともに、前立腺癌の進展機構の解明にも迫る独創的な研究成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前立腺癌におけるST3Ga1のプロモーター領域のCpG islandのDNAメチル化状態の解析およびアンドロゲンによるその制御機構についての研究成果を得ることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、DNAメチル化状態の変化により前立腺癌の転移・去勢抵抗性癌への進展に関与する遺伝子の同定とアンドロゲンによるその制御機構について検討する方針である。アンドロゲン感受性前立腺癌細胞(LNCap)においてアンドロゲンにより発現が上昇する遺伝子のうち、前立腺癌の進展に関与する遺伝子としてClusterin、IGFIRなどの遺伝子を同定している。これらの遺伝子のCpGメチル化状態がアンドロゲンにより制御されるかどうかを今後検討する。前立腺癌の進展と対象とする遺伝子発現の相関、それに及ぼすアンドロゲンの作用について検討し、アンドロゲンを介したCpGメチル化制御による前立腺癌の進展機構を明らかにする。
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