研究課題/領域番号 |
12J03994
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
兵頭 究 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | ゲノムRNA複製 / 細胞内膜輸送系 / RCNMV / Arf1 / 宿主因子 |
研究概要 |
本申請研究では小胞体膜上で複製するRed clover necrotic mosaic virus(RCNMV)のゲノムRNA複製におけるADP-ribosylation factor1(Arf1)の機能解析を行っている。Arf1はゴルジ体から小胞体への輸送を担うCOPI輸送系の制御を司るsmall GTPaseであり、植物細胞内では主にゴルジ体に局在する。Arf1の機能阻害剤であるBrefeldin A(BFA)とドミナントネガティブ変異体を用いて、Arf1がRCNMVのRNA複製に必須の宿主因子であることを明らかとした。また、BFA存在下ではウイルス複製酵素複合体の蓄積量が減少した。p27は小胞体マーカーと共局在し、小胞体膜の形態変化を誘導することが分かった。興味深いことに、BFA存在下ではこれらの現象は観察されなかった。さらにp27がArf1と直接相互作用すること、Arf1の細胞内局在をゴルジ体から小胞体膜へと変化させることを実証した。以上の結果より、Arf1はp27によりリクルートされ、膜上でのウイルス複製酵素複合体の形成ステップにおいて必須の役割を担っていることが強く示唆された。これらの成果はJournal of Virologyに掲載された。 Arf1は様々な因子と協調的に働き、膜輸送系を制御することが知られている。そこでArf1の関わる他の輸送系関連因子がRCNMVの複製酵素複合体の形成に関与する可能性を検証するため、二段階共免疫沈降法によりRCNMVの複製酵素タンパク質に結合する宿主タンパク質を高度に精製し、質量分析によりそれらの同定を行った。その結果Arf1の他に、複数の膜輸送関連因子を新たな宿主因子候補として同定することに成功した。現在これらの候補因子の機能解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本申請研究はArf1に着目し、RCNMV複製における細胞内膜輸送系の役割を解明することを目的としている。現在までに(A)Arf1がRCNMV複製のどの冬テップに関わるかを同定し、(B)Sariのドミナントネガティブ変異体を用いた解析からCOPII経路もRCNMVの複製に必要であること、を明らかとした。以上の成果をJournal of Virologyに投稿し、掲載された。質量分析により膜輸送系に関与する宿主タンパク質を複数種類RCNMVの宿主因子候補として同定し、これらの RCNMV複製における機能解析を現在進めている。Arf1の機能解析結果を論文化しただけでなく、新たな宿主因子候補を同定するところまで研究を進められたことから、当初の予定以上の進展があったと考える。
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今後の研究の推進方策 |
質量分析により同定された新たな宿主因子候補のうち(i)COPIサブユニットα,β,Y(ii)phospholipaseD(PLD)(iii)guanine nucleotide-exchange factor(GEF)の3つに特に着目し、解析を進める。これらの因子をVIGSによりノックダウンし、RCNMV複製に対する影響を調べる。RCNMV複製酵素タンパク質との相互作用を確認する。その後細胞内局在や複製ステップのどこに関わるかなどを細胞生物学的、生化学的手法を用いて調査し論文化を目指す。特にPLDはリン脂質の一種であるphosphatidicacid(PA)の産生に関与することが知られているので、PAとRCNMV複製酵素タンパク質との相互作用をlipid overlay assayにより調べる。
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