研究概要 |
昨年度は微結晶懸濁液に磁場を印加し, それをin-situでX線回折測定を行うことにより得られた回折図から結晶構造解析を行う方法を考案した。具体的には微結晶懸濁液に静磁場、回転磁場をそれぞれ印加することで二種類の配向を反映したX線回折図を得ることができたので、この二種類の回折図から結晶構造解析を行う手法の開発であった。一般的に結晶構造解析は回折図中の回折ピークを指数付けする第一段階と回折ピークの強度から結晶構造を導く第二段階にわかれる。本手法では実験にL-アラニンを用いて結晶構造解析の第一段階であるインデキシングが可能なことを証明した。結晶構造解析の第二段階であるピーク強度から実際の結晶構造を求めるところも改善の余地はあるものの十分な結果が得られた。特に第一段階は通常の粉末結晶構造解析から行うことは難しいことが多いので微結晶粉末試料の構造解析を簡便にできる可能性が高い。 つまり、微結晶から結晶構造を求める手法の開発が前進したと言える。これは大きな結晶が得られず構造解析ができなかった物質の結晶構造解析を行う一助になる。特にバイオマス関係でもよく用いられる酵素などのタンパク質には大きな結晶が得られない物質が多いため、この研究はバイオマス材料の発展のために非常に重要と言える。 ただし、当初の計画では結晶構造が未知のタンパク質の結晶構造解析を本手法で行う予定であったが、そこまでには至らなかった。構造が既知のL-アラニンの実験で本手法の有効性を示すところまでは可能であったので、未知の物質を探すことがこれからの課題である。
|