研究課題/領域番号 |
12J03997
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
北沢 太郎 東京大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | Hox遺伝子 / Dlx遺伝子 / 鰓弓 / 神経堤細胞 / 形態形成 / ChIP-seq |
研究概要 |
Hox遺伝子は頭尾軸沿いのコンパートメント構造に位置情報を与える。諸々のHoxのノックダウン・異所性発現の実験の結果から、Hox遺伝子群が位置情報のマスターレギュレーターであることは疑い無い。しかし、in vivoでの劇的な表現型に比べ、分子メカニズムの解明はまだまだ未解明であり、ゲノム上のターゲット遺伝子ですらほとんど知られていないのが現状である。私は、頭頚部のHox異所性発現の系を用いてHOxがin vivoで働く際の分子メカニズムを解析してきた。具体的にはHOxa2をCAGプロモーターとloxP-stop-loxPにつなげたコンストラクトをROSA26の遺伝子座に相同組み換えで挿入し、神経堤細胞特異的にCreを発現させるWnt1::Creマウスと掛け合わせることで本来Hoxネガティブの神経堤細胞にHoxa2を過剰発現させた。その結果、今まで哺乳類では確認されたことの無かった第1咽頭弓の第2咽頭弓へのホメオティック変異が確認された。さらに重要な点として、咽頭弓は神経堤細胞だけでなく、内胚葉、表皮外胚葉、コア中胚葉などによっても形成されており、どの組織におけるHox遺伝子が位置情報を与えるのに重要なのかが今までは明らかになっていなかったが、今回の神経堤細胞特異的なHoxの発現でホメオティック変異が確認されたことで神経堤細胞が責任組織であることが明らかになった。また、以前HOxa2やHoxa3をEdbraの遺伝子座に挿入した時に確認したような異所性のHoxの影響が背腹のコンテクストに依存するという現象が最確認された。これはHoxとDlxのクロストークの可能性を示唆するが、実際HoxのノックインマウスとDlx5/6のノックアウトマウスの鰓弓の転写産物のマイクロアレイデータを取得することでHoxとDlxが遺伝子制御において拮抗していることを発見した。さらにHOxが鰓弓においてどのように遺伝子制御をしているかを解明するために、第1鰓弓の上顎突起、下顎突起、更に第2鰓弓をH3K4triMeの抗体を使いChIP-seqを行いエピジェネティックな修飾の解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Hoxa2の過剰発現マウスの作出に成功した。このマウスが鰓弓におけるHox遺伝子の役割の解析に非常に有用であることが明らかになった。具体的には今まで確認されたことの無い哺乳類における第1鰓弓の第2鰓弓化が確認され、神経堤細胞におけるHoxコードが位置情報を与える必要十分条件であることが明らかになり、さらにHox遺伝子とDlx遺伝子のクロストークの解析が相当に進んだ。胎児組織へのChlP-seqも成功し、この一年でHoxの機能解析が非常に進展したと言える。
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今後の研究の推進方策 |
Hoxa2の過剰発現マウスの解析をさらに進め、鰓弓におけるHoxコードの役割を明らかにする。またChlP-seqをH3K4triMe以外のピストン修飾、さらにHox遺伝子やDlx遺伝子に対しても行いこれらのマスターレギュレーターが働く分子機序を明らかにしていきたい。
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