研究課題/領域番号 |
12J04065
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研究機関 | 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設) |
研究代表者 |
蛭田 千鶴江 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設), 岡崎統合バイオサイエンスセンター, 特別研究員(PD)
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キーワード | 単為生殖 / 有性生殖 / 生殖様式 / ミジンコ / マイクロインジェクション / RNAi / 減数分裂 / ゲノム編集 |
研究概要 |
ミジンコは、環境の変化に応答して単為生殖と有性生殖を使い分けているが、いずれの生殖様式でも2倍体の個体が生まれる。本研究では、この2つの生殖様式が卵形成過程のどの段階がどのように異なることで実現するのかを解明することを目的としている。 まず、有性生殖様式を解析する基盤となるオスの誘導や交尾についての条件を検討し整理した。これらの成果は、書籍に1章をあてて掲載された(Hiruta et al., 2014)。さらに、有性生殖系統のマイクロサテライトマーカーの選定により交配の有無について検証できるようになったので、交尾後の卵を採取し、交配が起こりやすい系統の組み合わせを探索している。また、受精の時期や場所、卵形成時の減数分裂過程を記載するため、経時的なサンプリングと組織標本の観察を進めている。 単為生殖については、第1減数分裂が途中で停止しスキップする「減数しない減数分裂」が起こることがわかっているが、分裂の停止への関与が予想されるMAPKの阻害剤を用いた実験を進めている。また、ミジンコは乾燥や寒冷に耐性のある休眠卵を主に有性生殖で産むが、単為生殖で産む系統もいる。この単為発生する休眠卵は、通常の単為発生卵との比較に重要な示唆を与えてくれると考え、休眠卵形成過程の記載に必要なステージ表を作成した。この成果は、国際誌に掲載された(Hiruta and Tochinai, 2014)。 さらに、生殖様式の分子機構を解析するために、ミジンコにおいて初となるマイクロインジェクションによる初期胚でのRNA干渉法を確立した。これらの成果は、BMC Biotechnology誌に掲載され、Highly accessed paperに認定された(Hiruta et al., 2013)。さらに、標的遺伝子のノックアウトやノックインを可能にするため、人工制限酵素を用いたゲノム編集法の確立に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の二本柱である有性生殖と単為生殖様式について、卵形成過程に注目した解析を継続している。有性生殖様式については、受精と減数分裂の過程を細胞組織形態学的な手法を用いて記載を進めている。単為生殖様式については、分裂制御に関与すると予想される因子の阻害剤等を用いた解析を行っている。また、それぞれの生殖様式の分子機構を明らかにするために用いる、マイクロインジェクションによるRNA干渉法を確立するとともに、逆遺伝学的解析を可能にするゲノム編集法の確立に取り組み、着実に研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
有性生殖様式については、引き続き細胞組織形態学的に卵形成過程と受精の記載を進める。単為生殖については、分裂の制御に関わると予想される因子の阻害剤等を用いた解析を行い、減数しない減数分裂の分子機構を解明する糸口を見つける。各生殖様式の分子機構を解析する基盤として、卵巣の体外培養と人工授精を計画に盛り込んでいたが、実現の見通しが立っていない。その代わりとして、マイクロインジェクションによるRNA干渉法を確立したが、機能解析可能な時間帯は初期胚に限られているのが現状である。そのため、①ノックアウトやノックインを可能にする人工制限酵素を用いたゲノム編集法の確立や、②生殖細胞を蛍光標識した変異体の作製を進めていく予定である。
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