研究課題/領域番号 |
12J04070
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高良 和宏 大阪大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 癌 / 血管新生 |
研究概要 |
本年度は、腫瘍血管の成熟化分子機構を解明するために、腫瘍血管の成熟化を誘導する分子の探索とその分子の腫瘍血管に対する機能評価を行った。腫瘍細胞を移植したマウスに候補となる分子を投与した後、腫瘍を回収し、腫瘍血管を共焦点レーザー顕微鏡により解析を行った。その結果、形態的に脆弱で走行もいびつな腫瘍血管が正常に近い血管に誘導するような分子の探索に成功した。さらに血管の機能的な解析を行うと、未投与群では血管透過性が亢進しており、腫瘍組織内の間質圧が高く、抗がん剤などの薬剤送達効率が低いが、正常化を誘導する分子を投与した群では、腫瘍内の血液還流性も顕著に改善され、腫瘍内への抗がん剤の到達性も顕著に改善されていることが明らかとなった。このような投与型の正常化因子は、未だどのグループも同定できておらず、この発見は、薬剤としての臨床応用の点で大変意義のある研究であることが明らかである。 また、腫瘍血管の正常化を誘導する分子のレセプターの解析を行った。現在までに、レセプターとなりうる候補が複数個存在する。血管正常化に関わるレセプターを特定するために、担がんモデルマウスから腫瘍を回収し、フローサイトメトリーを用いて、プライマリーの腫瘍血管内皮細胞(CD31+,CD45-)をソーティングした。回収した腫瘍血管内皮細胞のRNAを抽出し、定量的PCRによりレセプターの発現を解析した結果、腫瘍組織において内皮細胞特異的に発現している分子を同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでの研究において、腫瘍血管の成熟化遺伝子は数種同定されているが、マウス等の実験動物に投与して、実際に腫瘍血管の正常化を誘導できる分子は未だに発見されていない。しかし、我々はこれまでの研究により、担癌マウスに投与して、腫瘍血管の正常化を誘導可能な因子の同定に成功した。これは、薬剤への応用という点において有意義な研究が進行していることが明らかである。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、我々が同定した腫瘍血管正常化因子を用いた血管形態・機能の検討を行ってきた。さらに、抗がん剤との併用療法により、抗腫瘍効果を著しく高めることが示された。そこで今後は、腫瘍血管の詳細な正常化メカニズムの解明を行う必要があると考え、腫瘍血管の正常化前後における、血管内皮細胞の遺伝子変化を解析し、さらに、細胞内伝達の解析を行う予定である。
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