我々のこれまでの研究により、LPA(Lysophasphatidic acid)が腫瘍血管網を制御する因子であることを明らかとしてきた。そこで引き続きLPAの臨床応用を目的として、その分子機構の解明、及びその臨床応用への可能性の検討を行った。 LPAを投与することで腫瘍血管のネットワークが正常に誘導されるが、LPA4ノックアウトマウスを用いた担癌マウスにLPAを投与しても、腫瘍血管の正常化は誘導されなかった。このことからLPA-LPAR4シグナルが腫瘍血管の正常化に寄与していることが明らかとなった。またLPAR4に選択的に機能する化合物を投与した結果、LPAと同様に腫瘍血管のネットワークの正常化が観察された。更に、in vitroにおける正常化機構の解析において、LPAR4を内因性に発現している血管内皮細胞の培養細胞であるMS-1細胞を用いた検討を行った。その結果、LPAの濃度依存的に血管内皮細胞同士のバリア機能が亢進した。またsiRNAを用いた検討により、LPAR4を介した血管内皮細胞のバリア機能が亢進していることが明らかとなった。以上の結果より、in vitro、in vivoにおいてLPAには血管内皮細胞のバリア機能亢進を誘導することにより、血管透過性の正常化などを誘起し、腫瘍血管を正常化するという新たな機構の発見に至った。またLPAR4の選択的なアゴニストが今後、腫瘍血管制御標的としての有用性を見出すに至った。
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