軟骨は間葉系では例外的な無血管組織として知られ、軟骨が組織としての機能を維持するためには、軟骨ECMへの血管侵入から守られる必要がある。しかし、この特徴的な軟骨の無血管状態維持機構については良くわかっていない。軟骨に発現するChondromodulin I (ChM-1)は分泌型の糖タンパク質で、軟骨ECMに蓄積して血管の侵入を阻害することで軟骨組織の形成・維持に関与することが知られている。 昨年度までに、ゼブラフィッシュを用いたin vivo組織特異的転写活性解析によって、ゼブラフィッシュchm1遺伝子の軟骨特異的な発現を担うcis-elementを同定し、JASPAR databaseを用いてこのcis-elementに結合すると予測された候補転写因子とゼブラフィッシュChM-I遺伝子翻訳開始点上流300 bpの領域を用いたデュアルルシフェラーゼアッセイから、MafGおよびNFICがゼブラフィッシュChM-I遺伝子翻訳開始点上流300 bpの領域の転写活性を上昇させることを見出していた。これらの転写因子がcis-elementと直接結合して機能するかについて、in vitroでのゲルシフトアッセイで確認を行った結果、NFI-Cがcis-elementを含む約50 bpの領域と特異的に結合することが確認できた。また、生後3日目のゼブラフィッシュを用いたin vivoクロマチン免疫沈降法により、in vivoにおいてもNFI-Cが同定したcis-elementを含むzchm1遺伝子のプロモーター領域に結合していることを見出した。また、ラットの初代培養軟骨細胞を樹立し、siRNAを用いたNFI-Cの発現抑制実験を行った結果、NFI-Cの発現抑制によりchm1遺伝子の発現が減少することが明らかとなり、NFICによるchm1遺伝子の制御機構が保存されている可能性が示唆された。
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