研究概要 |
【マンザミンBの合成研究】 当研究室で既に行われていたマンザミンBの全合成研究について引き続き行った。基本骨格となるA,B,C,Dの4つの環のうち、不斉Diels-Alder反応により既に達成されているAB環の構築については、大量スケールでの合成を行い80グラムのAB環化合物を得た。11員環であるC環の構築には閉環メタセシスを用いることとし、それに必要な側鎖の導入を検討した。これまでは、その側鎖の導入の基点となる窒素原子上のアセチル保護基の脱保護がうまく進行しなかったが、より反応性の高いトリフルオロアセチル基へと変換する反応を見出し、脱保護と側鎖の導入に成功した。閉環メタセシスによるC環の構築は成功したものの、二量体の得られる割合が高かった。しかし、この二量体は開環メタセシスにより出発物質へと容易に変換できることから、原料回収を考慮して、C環を54%の収率で構築することに成功した。しかしながら、最後のD環を閉環メタセシスで構築したところ、望みのシスオレフィンが得られず、トランスオレフィンが単一の生成物として得られたことから、D環構築法の見直しが必要である。 【ロリジンEの合成研究】 ロリジンEの合成の鍵工程となる分子内ヘテロDiels-Alder反応の知見を得るため、当研究室の不斉Diels-Alder反応で合成したキラルな付加体をシクロヘキサジエンに変換してモデル基質とし、検討を行った。結果、ベンゾキノンやマレイミドとの分子間Diels-Alder反応や、ニトロソベンゼンとの分子間ヘテロDiels-Alder反応が容易に進行することを突き止め、またこれらの付加体をX線結晶構造解析により証明した。 また、もうひとつの鍵となる、当研究室の不斉Diels-Alder反応による四級炭素の構築については、3-メチルマレイミドを基質として用いることで四級炭素の構築に成功した.
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