研究概要 |
本年度に実施した研究は,大きく分けて(1)核燃料サイクルの多国間管理に関する制度設計研究,(2)地域保障措置に関する事例研究,(3)原子力技術・資機材の輸出管理に関する事例研究,(4)国際的な原子力利用の動向とグローバル・ガバナンスに関する研究である。 (1)は本研究課題の対象である核燃料サイクルの多国間管理に関する既存事例の分析であり,また(2)・(3)は地域保障措置や輸出管理に関わる企業間の取組み(「原子力発電所輸出者のための行動原則」)についての事例研究である。そして(4)は国際的な原子力利用の動向がグローバルなガバナンスに対して与える影響を考察したものである。(1)は本研究課題の中核となるものだが,対して(2)・(3)は核燃料サイクルの多国間管理と他の核不拡散上の措置との関係性を考察するための基盤,(4)は核燃料サイクルの多国間管理をはじめとした個別の措置を,国際的な核不拡散体制全体の中に位置づけるための基盤である。 (1)からは,核燃料サイクルの多国間管理の制度設計では「他の制度等との相互依存」「協力と管理のバランス」「脱退に対する措置」が重要であること,また(2)からは地域保障措置においては「IAEA保障措置と親和的であること」「地域的な特性(加盟国の技術力等)を反映した制度・組織の設計」「不遵守や脱退に対する措置」が重要であること,また(3)からは「行動原則」により「ガバナンスのレベル」や「領域」が重層化・拡大したこと,法的拘束力がないため「実効性」は今後の運用に左右されること,中長期的には供給者の増加により「普遍性」が低下する可能性があること等が明らかになった。また(4)からは原子力市場で「構造変化」が起きており,その結果核不拡散に必ずしも熱心でない露・中などが供給国として台頭してくることによって,二国間原子力協力協定を通じたガバナンスが緩む可能性があることなどが明らかになった。
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