研究概要 |
細胞内核酸認識に関与する候補分子として、マウス胎児由来線維芽細胞におけるスクリーニングから得られたタンパク質30種類のうち、2つの分子(ここではNAS1, NAS2とする)について、コンディショナル遺伝子欠損(cKO)マウスを用いた解析を行った。まず全身でCreリコンビナーゼを発現するCAG-Creマウスと掛け合わせて得た全身性遺伝子欠損(KO)マウス由来細胞を調製し、細胞内に核酸を導入する刺激を行ったところ、NAS2遺伝子欠損マウス由来細胞においては、野生型マウス由来細胞と同様に核酸誘導性のI型インターフェロン(IFN-b)、及び炎症性サイトカイン(IL-6, IL-12p40)の発現誘導が起こることが明らかになり、NAS2は核酸認識受容体コンプレックスとして機能していない可能性が示唆されたため、当該年度のその後の研究はNAS1に絞って行った。NAS1については、全身性遺伝子欠損マウスのバッククロスを継続して進めたところ、C57BL/6バックグラウンドでは、NAS1遺伝子欠損マウスは胎生致死であることが明らかになった。全身性遺伝子欠損マウスによる検討では、骨髄細胞由来樹状細胞を核酸刺激した際の転写因子IRF5の核への移行が、NAS1遺伝子欠損マウス由来細胞では50%程度低下していたため、ミエロイド系細胞において細胞種特異的に遺伝子欠損を行う目的で、Floxed-NAS1マウスとLysozyme-Creマウスとの掛け合わせを開始した。IRF5によって誘導されるIL-12p40はTh1応答を誘導するサイトカインIL-12のコンポーネントであるので、得られたミエロイド系細胞特異的遺伝子欠損マウスを、Th1免疫応答のモデルの一つであるリステリア感染に供し、その応答を評価した。ところが、ミエロイド系細胞特異的NAS1遺伝子欠損マウスにおいても、野生型マウスにくらべ、ほぼ同等の生存率を示した。
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