研究課題/領域番号 |
12J04123
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
後神 利志 東北大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
|
キーワード | (e,e'K^+)反応 / 逆輸送行列の最適化 / 素過程p(e,e'K^+)Λ,Σ^0 |
研究概要 |
Jefferson Lab(JLab)において2009年に取得した^7_ΛAHe、^9_ΛLi、^<10>_ΛBe、^<12>_ΛB、^<52>_ΛV、Λ、Σ^0のデータ解析に関して主に以下の2点を重点的に行った。 1.エネルギー分解能向上の為の逆輸送行列の新最適化コードの開発 従来、ポリエチレン(CH_2)標的データから得られるΛ、Σ^0のピークがPDGの値に近づくように、スペクトロメータの検出面における粒子の位置・角度情報を標的における運動量・角度情報に変換する逆輸送行列の最適化を行う。本年度はそれに加え、過去に2度同反応で測定が行われている^<12>_ΛBの基底状態も輸送行列最適化ルーチン内の最小化するべきχ^2に取り入れた。この際、^<12>_ΛBの基底状態のχ^2に対するレファレンスは期待される応答関数でフィッティングした際の中心値を用いるが、このフィッティング結果がピーク領域のバックグラウンドの形に大きく依存する。その効果を無くす為、フィッティングを行う前段階でバックグラウンドの形を解析的に予測し元のスペクトラムから差し引くルーチンを新たに加えることにより、輸送行列最適化のχ^2の収束を大きく改善する事に成功した。新たなコードの導入後には、^<12>C(e,e'K^+)^<12>_ΛBのs_Λ、p_Λのピークを~0.75MeV(FWHM)の分解能で観測できるレベルに到達している。現在は更なる分解能の改善とリニアリティーを良い状態で保つ為の新たなコードの開発を進めている。 2.素過程q(γ^*,K^+)Λ.Σ^0の生成断面積の導出 素過程の研究はΛハイパー核の理論計算の基本的なインプットになる情報でる事からも重要な研究である。特に我々は(仮想)光子に対するK^+の散乱角の前方領域(θ^<CM>〈20°)のハイパー核の生成を行っている為、その角度領域の素過程の理解が殊更に必要になる。しかし、SAPHIRやCLASにおいて高統計でかつ多くのエネルギー領域の研究がされているにも関わらず、前方領域のデータ同士のコンシステンシーが欠けている。その事実に伴い特に前方における理論計算が全く異なる挙動を示している(P.Bydzovsky,PRC76(2007)065202)。素過程の理論的な解釈を明確にする為には前方領域の誤差の小さいデータが求められる。私は、CH_2標的データの解析からθ^<CM>~17°におけるΛ、Σ^0の生成微分断面積を求めた。さらに.理論計算の強いコンストレインを与える情報の一つである、仮想光子の四元運動量の2乗Q^2の依存性も導いた。現在、これらの結果を確かなものとする為に、断面積に大きく寄与する各効率の再評価とH_2O標的データから求めたΛ、Σ^0の断面積とのコンシステンシーのチェックを行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に沿って研究を進める事が出来たため。
|
今後の研究の推進方策 |
1.A=7からA=52までの∧ハイパー核精密分光 逆輸送行列の最適化コードが分解能を設計値に近づくように高める事が確認できたので、次のステップとしてリニアリティを良く保ちつつエネルギー分解能を高めるようなコードに改善する。 2.素過程p(e.e'K^+)∧/Σ^0の研究 効率等の再見積りを行い、CH_2標的から得られた∧/Σ^0の生成微分断面積の最終確認を行う。また、H_2O標的データから得られる同反応の解析を行い一貫性を確かめる。
|