研究課題/領域番号 |
12J04126
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
菊地 逸平 東京大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | シグナル伝達 / クロストーク |
研究概要 |
高等真核生物にはWntシグナル、Hedgehogシグナル、Notchシグナル、TGF-βシグナルなどの各種のシグナル伝達経路が存在する。これらのシグナル経路は、密接なクロストーク機構のもとに協調的な制御を受けることが知られ、その破綻はがんを含めた各種疾患の発症に関与している。しかし、そのクロストークを調節する分子機構は未だ不明である。そこで本研究では各種シグナルの集約点となりうる核内分子parafibrominに着目し、parafibrominが司るクロストーク機構の解明を目指している。 本年度は、parafibrominを介したNotchシグナル調節機構を検討した。結果、parafibrominはNotchシグナルの転写因子Notchと複合体を形成し、Notchシグナル標的遺伝子転写活性化のコアクチベーターとして働くことがわかった。さらに、parafibrominが支配するシグナルクロストークの役割を生物個体レベルで検証するため、parafibrominのコンディショナルノックアウトマウスを用いた解析を行った。結果、parafibrominノックアウトマウスは腸上皮でのWnt・Hedgehog両シグナルの不活性化を示し、腸上皮の組織恒常性が破壊されることが示された。このことから、parafibrominを介したクロストークは生物個体レベルでも稼働し重要な役割を担うことが示された。 これらの知見は、これまで明らかにされていなかった各種シグナル間のクロストーク機構を明らかにするものであり、シグナルクロストーク異常が関与する疾患の予防や治療法の確立に貢献しうるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は「parafibrominを介したNotchシグナル調節機構の解明」を当初の計画とし、それについて計画通り達成することができた。また、その当初の計画に加え、本年度中には個体レベルでの解析を順調に進めることができた。このことから、現在までのところ本研究は当初の計画以上に進展しているものと評価する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策として、本年度中に明らかとなったparafibrominを介したNotchシグナルと、ほかの各種シグナルとのクロストーク機構の解明を細胞ならびに個体レベルで解明していくことを目指す。それにより、parafibrominが司る各種シグナルクロストーク機構の包括的な理解を試みる。
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