研究概要 |
まず, 中性子数20,28付近のドリップライン近傍核であるMg同位体について, その構造と反応の解析を行った. 反対称化分子動力学や変形平均場模型計算によるMgの波動関数とメルボルン有効相互作用を用いて, Mg同位体入射反応の光学ポテンシャルを計算し, 全反応断面積の実験を解析した. Mg同位体の変形度を系統的に決定し, ^<37>Mgが極めて特異な構造である変形ハロー核である可能性を示した. 中性子過剰Mg同位体の魔法数の破れについて, 理解できた. この研究については, 福田光順准教授(大阪大学)らの実験グループと共同で議論を進めた. この成果を実験グループが論文にまとめ, Physical Review Letter誌に投稿した. また, Mg同位体反応解析の理論的研究の詳細について論文にまとめ, Physical Review C誌に投稿し, 2014年4月に掲載決定となった. 微視的反応理論に関する研究として, 有効2核子間相互作用に基づく核子-核間ポテンシャルの性質をまとめた論文がPhysical Review C誌に掲載された. また, 河野通郎教授(九州歯科大学)と共同でカイラル有効理論の核力(2核子力+3核子力)に基づく有効2核子間相互作用の構築に取り組んだ. 既存の有効相互作用であるMelbourne有効相互作用にカイラル有効理論3核子力の効果を補正し, 核-核弾性散乱を系統的に解析した. その結果, カイラル有効理論3核子力の効果が, 測定された核一核弾性散乱角分布における実験との一致を大幅に改善することを示した. このように, 量子色力学から出発し核多体系の反応を記述する理論の構築は, 素粒子・ハドロン物理と原子核物理を結びつける極めて重要な研究である.
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