研究課題
本年度、申請者は二つのテーマについて研究を行った。一つ目は小胞体内で膨大な量の分泌タンパク質のフォールディングを担う、小胞体酸化酵素、Ero1とPrx4の局在メカニズムに関する研究である。これら二つの酸化酵素は、小胞体に必須な酵素であるにも関わらず、小胞体局在タンパク質を小胞体に係留させる小胞体残留シグナルをもたないという、非常に興味深い特徴を有している。私は、この二つの酸化酵素が、ERp44とPDIによって、小胞体と小胞体-ゴルジ中間体の二段階で係留を受けていることを明らかにした。この成果は、現在Journal of Biological Chemstryに投稿しリバイス実験中である。二つ目のテーマは、サイトゾルでのタンパク質のホメオスタシスの乱れが、別のオルガネラである小胞体にどのような影響を及ぼすかを研究目的に研究を行った。これまで、個々のオルガネラ単位でのタンパク質の品質管理機構については多くの知見が報告されているが、脂質二重膜を越えて、オルガネラ間でのタンパク質の品質管理及び恒常性維持機構については、全く研究の行われていなかった。申請者は、North Western大学のMorimto.R教授とMax Planck研究所のHartl.U教授らとの共同研究の下、サイトゾルでのプロテアソーム阻害や凝集性タンパク質の発現、また老化が、小胞体内のレドックスバランスを還元的にシフトさせる現象を発見した。小胞体内がレドックス環境は分泌タンパク質の分泌遅延や、カルシウム制御の乱れを引き起こすことが知られている。こうした背景から、我々の発見した現象はサイトゾルでのタンパク質の品質管理の乱れが、小胞体に障害をもたらすだけでなく、細胞内外での機能制御の乱れへと発展するという新たな経路を示唆する。
1: 当初の計画以上に進展している
我々は、これまで誰も挑戦しなかった、新たな着想である、オルガネラを越えた現象について研究を行い、サイトゾルでのタンパク質ホメオスタシスの乱れが小胞体を還元的環境ヘシフトさせるという現象を発見した。本研究は現在、論文投稿のための準備しており、当初予定していた予定よりもかなり早く進展している。
今後は、論文投稿やそのリバイスといった、論文として研究を完結させる方向で、研究は進展することとなる。そのため、論理的な矛盾のないことを確証させるための追加実験やさらなる議論が必要となる。また、海外の研究者との共同研究であるため、海外へ出張しディスカッションをすること必要性も生まれる。
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Antioxidants & Redox Signaling
巻: Apr 15;16(8) ページ: 763-771
10.1089/ars.2011.4238