本年度、私は二つのテーマについて研究を行った。一つ目は小胞体内で膨大な量の分泌タンパク質のフォールディングを担う小胞体酸化酵素、ErolとPrx4の局在メカニズムに関する研究である。これら二つの酸化酵素は、小胞体に必須な酵素であるにも関わらず、小胞体局在タンパク質を小胞体に係留させる小胞体残留シグナルをもたないという、非常に興味深い特徴を有している。私は、この二つの酸化酵素が、ERp44とPDIによって、小胞体と小胞体一ゴルジ中間体の二段階で係留を受けていることを明らかにした。この成果は、2013年10月付けでJournal of Biological Chemistry掲載された。さらに、2013年10月に金沢大学で行われた第8回小胞体ストレス研究会で私が口頭発表を行い大きな反響を得た。 二つ目のテーマは、サイトゾルでのタンパク質のホメオスタシスの乱れが、別のオルガネラである小胞体にどのような影響を及ぼすかを研究目的に研究を行った。これまで、個々のオルガネラ単位でのタンパク質の品質管理機構については多くの知見が報告されているが、オルガネラを隔離する脂質二重膜を越えて、オルガネラ間でのタンパク質の品質管理及び恒常性維持機構については、全く研究が行われていなかった。私は、North Western大学のMorimoto. R教授とMax Planck研究所のHartl. U教授らとの共同研究の下、サイトゾルでのプロテアソーム阻害や凝集性タンパク質の発現、さらに老化に伴って、小胞体内のレドックスバランスを還元的にシフトさせる現象を発見した。小胞体内がレドックス環境は分泌タンパク質の分泌遅延や、カルシウム制御の乱れを引き起こすことが知られている。こうした背景から、我々の発見した現象はサイトゾルでのタンパク質の品質管理の乱れが、小胞体に障害をもたらすだけでなく、細胞内外での機能制御の乱れへと発展するという新たな経路を示唆する。これらの知見をまとめ、現在国際科学誌に投稿準備を進めている
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