研究課題/領域番号 |
12J04145
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
井上 大地 東京大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 骨髄異形成症候群 / エピジェネティクス / ASXL1変異 / EZH2 / microRNA / Clec5a / Hoxa9 |
研究概要 |
生体内におけるエピジェネティクス異常と骨髄異形成症候群(mS)との関連性の解明を目的として、ASXL1変異がどのようなヒストン修飾異常を介して標的遺伝子の発現異常・腫瘍化をきたすかについて検討を行っている。研究成果について簡潔に述べる。ASXL1変異体を用いたマウス骨髄移植モデルでは、移植後6か月から血球減少、偽ペルゲル核異常・過分葉などの分葉異常、芽球の末梢血中への出現、骨髄の過形成などMDSに特徴的な形質を呈し1年以上の経過(中央値400.5日)を経て死亡する。増殖に関連したclassI変異であるN-Ras-G12V活性型変異体とASXL1変異体を共発現させた骨髄細胞を移植するとN-Ras-G12Vにより惹起されるMPN(骨髄増殖性腫瘍)に分化抑制がかかり、AML様の病態を呈する。発症・死亡までの期間の短縮、芽球比率の顕著な上昇からASXL1変異体は分化抑制をきたすものと予想された。細胞株においても同様に分化抑制が認められた。また、発現解析の結果からASXL1変異体の導入はポリコームの標的遺伝子を生理的状態とは逆に発現を上昇させることがGene Set Enrichment Analysis(GSEA)で示された。さらにASXL1変異体はASXL1とEZH2との結合を阻害しEZH2の機能を抑えることで、抑制性修飾であることが知られているヒストンH3K27のトリメチル化を低下させHoxa9や特定のmicroRNAの発現が亢進する事が腫瘍化に繋がることを多岐にわたる実験により示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでにASXL1変異によるMDS発症メカニズムの一端を明らかにすることができており、概ね申請書の計画どおりに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
BMTモデルによる生体解析から上記の結果が得られたが、integration siteによる個体間での差や感染効率に差が生じるなどの問題点も見受けられる。この点を解決するために、条件的にASXL1変異体を過剰発現するノックインマウスを作成中である。これによりポリコーム複合体との関連を含めさらに踏み込んだ知見が期待される。例としては、mSの幹細胞の検索やDNAメチル化異常とASXL1変異体の関連について検討を行う。
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