研究課題/領域番号 |
12J04164
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
森本 裕也 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 気体電子回折 / 強光子場科学 / 超高速化学 |
研究概要 |
強レーザー場存在下でのみ起こりうる電子散乱現象である、レーザーアシステッド電子散乱過程を利用することで、フェムト秒の時間分解能を有する気体電子回折法を開発することが本研究の目標である。 本年度はまず、フェムト秒レーザーパルスのパルス幅を測定するために、スキャン型自己相関計を作成した。また、電子パルスのパルス幅を決定するために、電子パルス発生に用いているピコ秒紫外光パルスのパルス幅測定器を作成した。パルス幅測定の指標には、ピコ秒紫外光パルスとフェムト秒近赤外光パルスの和周波により発生する真空紫外光の強度を用いた。 次に、チタン・サファイアレーザーからのパルス幅500フェムト秒、波長800nmのレーザーパルスを用いて、運動エネルギー1keV、パルス幅15ピコ秒の電子パルスと四塩化炭素分子によるレーザーアシステッド電子散乱過程の観測実験を行った。散乱電子の運動エネルギースペクトル上に、1光子および2光子分だけ運動エネルギーが変化したレーザーアシステッド電子散乱信号を観測した。そして、1光子分だけ運動エネルギーが増減した散乱電子の角度分布に、明瞭な回折パターンを観測した。数値シミュレーションで得られた散乱角度分布との比較を行うことで、観測した回折パターンがフェムト秒レーザー場存在下での四塩化炭素の分子構造に由来することを示した。 最後に、レーザー場中にある原子・分子の電子状態をレーザーアシステッド電子散乱によって探索するために必要となる、小角散乱観測に特化した電子エネルギー分析器の設計に着手し、荷電粒子シミュレーションソフトを用いて、最適な電極の構成を決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、レーザーアシステッド電子回折法の原理証明実験に成功したため。また、小角散乱観測装置の設計も予定通りに進展している上に、レーザーパルス幅および電子パルス幅測定装置の開発に成功したことは当初の予定を超える進展であったため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終目標は、レーザー光によって誘起された分子の構造変化をレーザーアシステッド電子回折を用いてプローブすることである。このポンプ・プローブ法を実施するためには、分子構造の変化を観測できるほど高い信号強度が必要とされる。平成25年度は、その目的を達成するために必要となる装置性能を定量的に考察し、信号強度の増強に向けて、電子散乱装置やレーザー光源の改良案を具体的に挙げる。また、設計を行った小角散乱装置を製作し、レーザーアシステッド電子散乱過程が、レーザー場中にある分子の構造だけではなく、電子状態の探索にも応用可能であることを実証する実験を行う。
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