研究課題
本研究は、PPH-4の機能解析を軸として、減数分裂前期に、相同染色体が、どのようにお互いのDNA配列相同性を確認して対合、シナプシスそして組換えにいたるか、という謎の一端を解明することを目指す。まず、PPh-4の変異株(tm1598)の生殖腺核で、PC結合タンパク質抗体やFISHを用いて、染色体の整列とシナプトネマ複合体重合について定量的解析をした。この結果、変異株で相同染色体の対合が遅れ、またシナプトネマ複合体の重合が、非相同染色体間において起こっていることがわかった。また、フォスファターゼデッドのpph-4トランスジェニック株をMos-sci技術を用いて作成した。その表現型解析を行った結果、フォスファターゼデッド変異体は、欠失株と同じ表現型を示すことがわかったため、フォスファターゼ活性が、PPH-4の減数分裂前期における機能に、必須であることが明らかになった。また、免疫染色より、変異株では、組換えに必要なタンパク質RへD-51やRPA-1が、核内につくるfociの数が現象することがわかった。これは変異体で、組換えの数そのものが減少している可能性を示唆する。DAPI染色により、ディアキネシス期のDAPI bodiesの数を定量化した結果、変異体では、6個以上のDAPI bodiesが見られたことから、変異体では、交叉の数が、野生株と比べて減少していることもわかった。これは、上記、RAD-51,RAP-1fociの定量化から明らかになった、相同組み換えの総数が変異体において減少しているという結果と、矛盾が無い。また、この組換え中間体、交叉の減少は、個体の加齢とともに悪化することがわかった。具体的には、幼虫L4期から数えて24時間後の成虫と、72時間後の成虫を比べると、24時間後の成虫のほうが、交叉数が多く、また6個のBivalent DAPI bodiesの数も多かった。PPH-4タンパク質は、高度に保存されており、線虫とヒト間では、約90%のアミノ酸配列が保存されている。加齢による卵母細胞の減数分裂中のエラーの増加は、哺乳類においても観察されることから、線虫pph-4の機能解明は、ヒトまで保存された減数分裂の分子機構の一端を明らかにする可能性がある。
2: おおむね順調に進展している
本研究の細胞生物学的解析は、おおむね予定通りに進展している。生化学的実験は、免疫沈降の条件検討に問題があるため、期待していただけの生化学的解析結果はまだ出せていない。
エンドジェナスのタンパク質を認識するPPH-4抗体では、免疫沈降の際に、効率よくPPH-4タンパク質を沈降できないという問題があるため、現在、タグを付けたPPH-4のトランスジェニック株を作成中である。本年度、生化学的実験は、このトランスジェニック株を使用して行うことを目指している。
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PLOS Genetics
巻: 8:el002880 ページ: 41,292
10.1371/journal.pgen.1002880