研究課題/領域番号 |
12J04198
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高麗 雄介 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 宇宙論 / 場の量子論 |
研究概要 |
本研究課題の目標は、インフレーション宇宙で生成される密度ゆらぎの量子相関を、定量的に精確に予言すること、およびde Sitter時空の量子的安定性・不安定性の問題に迫ることであった。そこで我々は2012年度、インフレーション宇宙上の相互作用量子場のモデルとしてその理想的な極限であるde Sitter時空上の相互作用量子場を考察してきた。後者については、Higuchi et al.(2010)による先行研究があり、その内容は、二つのまったく異なる仕方で定義された量子場の真空状態が実は等価であることを示す画期的なものであった。しかし彼らの証明は限られた理論に対してなされたものであり、そのほかの理論への拡張は自明でない。このことは、より現実的なモデルを考察するという我々の本来の目標からすれば不満の残るものである。そこで我々は発想を切り替え、その拡張が可能な形を目指して独自のアプローチでこの問題に迫った。その結果、先行研究で得られた等価性の別証を与えることが出来、さらに、本来の目的であったより広い理論への拡張も、我々のアプローチではほぼ自明な形でなされることがわかった。de Sitter時空上の重力波はさまざまな観点から見て重要な研究対象であるが、我々のアプローチにより、とくにde Sitter時空上のグラビトンの相関関数を計算する手法の基礎ができた。これを応用すれば、de Sitter時空の量子的安定性の問題に寄与できると考える。また、我々の手法を用いれば、インフレーション宇宙で生成される密度ゆらぎの量子相関を、量子補正まで含めて定量的に計算することができると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
deSitter時空上のグラビトンについてループ補正を計算することが本年度の一つの目標であったが、研究開始当初はどうしていいか全く分からなかった。そこで我々は、2012年度の研究において簡単なモデルについて計算方法を確立した。これはグラビトンにも応用できる形をしている。グラピトンへの具体的な応用がまだ遂行できていないのは不満な点だが、その基礎を確立したという点において、本研究計画は順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後、2012年度に確立した方法をグラビトンに適用し、その具体的な計算を遂行する。とくに、第一歩としてはtreeレベルでグラビトンの相関関数を計算し、クラスター性等の成立を確認する。我々はクラスター性は成立することを期待しているが、もし成立しないことが分かればその原因を考察する。次にループ補正を考察するが、これには相関関数を計算したい物理量を適切に指定しなければ赤外発散が伴われることが他の研究から示唆されている。そこで、彼らの方法で定義される物理量の相関関数を見ることが第一のステップとなる。 また、deSitter時空上での計算を参考に、インフレーション宇宙における重力波相関等、観測にとって重要となる物理量の計算についても考察を進めたい。
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