研究課題
Toll様受容体(TLR)4は近年、非感染性の慢性炎症および自己免疫疾患の病態形成にも重要な役割を果たすことが分かってきている。全身性強皮症(Systemic Sclerosis; SSc)の病態についても過去の検討でTLR4シグナリングの果たす重要な役割が示唆されていたが、我々は昨年度までの検討で野生型マウスおよびTLR4のノックアウト(KO)マウスにおいて代表的なSSc動物モデルであるブレオマイシン誘発SScモデルマウスを作成して実験を行う中で、TLR4のノックアウトは本モデルマウスに認められる線維化と免疫異常の病態を有意に改善することを見いだした。今年度の成果として、上記のような非感染性の慢性炎症おけるTLRシグナリングの活性化には、ヒアルロン酸などのTLRの「内因性リガンド」とよばれる自己由来の分子に対する慢性的な免疫応答の関与が考えられていることを念頭に、本モデルマウスにおけるヒアルロン酸の発現について検討したところ、BLM投与群のマウス皮膚では有意にヒアルロン酸の発現が亢進しており、特に活発なコラーゲン産生を介して皮膚線維化に寄与するとされる筋線維芽細胞において、TLR4の発現とその内因性リガンドであるヒアルロン酸の発現の両者が著明に亢進していることを見いだし、本症の病態でのTLR4とその内因性リガンドを介した慢性活性化の機序の存在を考えた。さらに、geneticなSScモデルマウスであるTSKマウスをTLR4ノックアウトマウスと交配させTLR4を欠失したTSKマウスを作成し、その表現型を観察したところ、TLR4の欠失はTSKマウスの皮膚の線維化を有意に減弱することなどの知見が得られた。以上の結果は、2つの独立したSScマウスモデルにおけるTLR4シグナリングの重要性を示唆し、SScにおいてTLR4をターゲットとした治療が有効でありえる可能性が示唆された。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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