研究概要 |
次世代シーケンサーを用いた骨髄異形成症候群(MDS)の全エクソンシーケンスおよびSNP arrayによるコピー数解析については現在60例について解析が終了している。これまでに、我々の研究室ではMDSでは高頻度にU2AF1, SRSF2, SLF3B1, ZRSR2などのRNAスプライシング経路の遺伝子変異がみられることを報告したが(Ybshida et al. Nature 2011)、60例の全エクソンシーケンスでも同様の結果がえられている。また、それ以外にも新たな複数の症例で共通して変異が観察される遺伝子が見つかっており、多数例での変異検索・機能解析を行っている。60例の全エクソンシーケンスの結果から、上記のRNAスプライシング因子やTET2,遺伝子の変異はほとんどの病型のMDSに変異がみられることからMDS発症の初期に起こっていると考えられた。一方、N/KRAS、CBLなどの遺伝子変異はより進行した病型のMDSにみられていたことからMDSの進行に関わっていることが示され、最近これらの遺伝子変異を持つMDS症例は予後不良であることが報告されていることから予後予測に有用である可能性が示唆された。また、MDSにおける標的遺伝子に標的を絞って行ったMultiplexed Barcoded SequencingではやはりRNAスプライシング因子の遺伝子変異が高頻度かつ変異を持つ症例で排他的に変異がみられていて、MDS発症における重要な遺伝子変異であることが示された。また、SF3B1遺伝子はRARSやRCMD-RSといった環状鉄芽球が増加している病型のMDSの約75%と高頻度に変異が見られており、SF3B1遺伝子変異が診断に有用であることが示唆された。
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