研究課題/領域番号 |
12J04257
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
平塚 徹 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | ライブイメージング / 皮膚癌 |
研究概要 |
該研究者は、採用第1年目に、DMBA, TPAを使った発癌誘導により、ERK活性が非常に高い細胞群(ERKhigh細胞群)が出現することを発見している。採用第2年度においては、その細胞群を長期観察することでどのように変化するかを調べた。 1. 皮膚の同一部位を経日的に観察するための方法の確立 ERKhigh細胞群を長期間観察するためには、以前観察した部位と同一の観察視野を顕微鏡で見つける必要があり、正確かつ簡便な方法を確立する必要があった。該研究者は、真皮コラーゲンが自家蛍光を持っていること、毛根のある部分の真皮はコラーゲンがないことに着目し、毛根の配列をもとに皮膚の同一部位を同定する方法を確立した。 2. ERKhigh細胞群の経日的な変化の観察 該研究者はこれまでに34個のERKhigh細胞群を経日的に観察した。その結果、ほとんどのERKhigh細胞群(30個)は、細胞数が100個以下のうちに、数週間で消滅したが、その一方で、一部のERKhigh細胞群(4個)は消滅することなく、図2の細胞群のように、50日以上生存し続けた。興味深いことに、。それらの長期生存した細胞群では、単調に細胞数が増えるのではなく、一定の細胞数をしばらく保った後に突然、急激な増殖を始めるという特徴を示した。 3. ERKhigh細胞群からのDNA、RNA抽出方法の確立 該研究者は、これまでに発見したERKhigh細胞群の次世代シークエンサーを用いた網羅的解析を予定している。そのため、申請者は、観察した皮膚の領域をマーキングして切り取り、そこからDNAやRNAを抽出する方法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の一番困難である技術的な問題は、同一の細胞群を経日的に観察するという点である。しかし、該研究者は、毛根の配列を利用するという方法を自ら確立し、この問題を克服した。その結果、同一の細胞群を100日以上にわたって観察することが可能になった。そのような長期観察の結果、該研究者はERKhigh細胞の増殖パターンに急激な変化が見られることを明らかにしている。がん細胞において、形態学変化が起こる前にこのような変化がみられることを直接示した本研究は非常に意義があるものと思われる。さらに、より網羅的な解析なために次世代シークエンサーによる解析も現在進行中であり、今後ますますの発展が期待されるところである。
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今後の研究の推進方策 |
現在、該申請はDMBA, TPAを用いた発癌系を用いて実験を進めているが、それによる発誘導には半年以上の、間がかかるのが大きな問題である。その解決のため、該申請者は癌遺伝子HRasを強制発現するマウスを用いる。そのマウスにおいてもERKhigh細胞が現れることは既に確認済みである。HRas発現マウスでは1か月ほどで癌が生じることが知られており、より多くのERKhigh細胞を解析することができるものと思われる。さらに、経日的な変化だけでなく、タイムラプスイメージングをすることによって、周囲の正常細胞との関連や、細胞分裂における特徴を明らかにすることができるものと考えられる。今後、次世代シークエンサーによる解析を推進することにより、これまで知ることができなかった、発癌過程の超初期の変化を同定するという目的が達成されるものと考えられる。
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