研究課題/領域番号 |
12J04258
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松田 淳志 東京大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | RBM3 / HMGB1 / 自然免疫 / 細胞周期 |
研究概要 |
Tol1様受容体及び細胞質内核酸認識受容体を介した核酸認識機構は病原体感染に対する生体防御において必須の役割を果たす。これまでに核酸を認識する受容体の一つであるTLR9を介した経路にRBM3が関与することが示唆され、RBM3がTLR9のリガンドであるCpG-BDNA刺激により核内から核外へと移行すること、RBM3がCpG-Bと結合することがわかっている一方、TLR9応答におけるRBM3の役割や病原体感染時のRBM3の役割についてはまだ十分に解析が進んでいない。RBM3の植物のホモログは感染防御に機能しているという報告もあることから、RBM3の病原体感染時の役割について検討したところ、HSV_1感染においてIBM3遺伝子欠損マウスの生存率が野生型マウスに比して低いことがわかった。in vitroではTLR9の活性化によるサイトカイン産生に差はないものの、in vivoでのウイルス感染時のサイトカイン産生やウイルス増殖機構にRBM3がどのように関与しているのかということについて、研究計画に沿って研究を進めていく予定である。また、ヒトの様々な腫瘍組織でRBM3の発現が亢進していることが報告されており、RBM3過剰発現がん細胞株において細胞増殖が顕著に亢進することから、RBM3ががん原遺伝子である可能性が示唆されている。我々はマウス胎児由来線維芽細胞(MEF)においてRBM3がG2期の制御に関与していることを明らかとしたが、その詳細な機構は明らかになっていない。G2期からM期への移行に関与する分子であるCDC2についてウエスタンブロッティングにて解析を行ったが、リン酸化CDC2量に差は見られなかった。細胞周期に関わる他の分子群やMEF以外の他の細胞種を用いた解析も含めて、細胞周期におけるRBM3の作用点を明らかにして行く予定である。また、HMGB1コンディショナルノックアウトマウスの作製も完了し、今後はin vivoにおける田GBIの機能解析も進めて行く予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RBM3遺伝子欠損マウスを用いたウイルス感染実験にて興味深いデータが得られたことで、これまで不明であったRBM3の自然免疫応答における機能の解析が進むことが期待できる。また、概要には記していないが、HMGBlコンディショナルノックアウトマウスの作製が完了したため、これまで研究が進んでいなかったHMGB1のin vivoにおける役割の解析も可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
ウイルス感染におけるRBM3の機能を引き続き解析するとともに、自然免疫応答・発がん機構の解析手段として作製しているHMGBIコンディショナルノックアウトマウスを用いた検討を行いたいと考えている。前者についてはウイルス感染時のウイルスタイターの測定や感染細胞で起こる遺伝子発現をマイクロアレイにて網羅的に解析する予定である。後者については、これまでHMGB1のin vivoにおける役割は全く解析されていないので、メラノーマ転移実験やウイルス感染実験等、in vivo解析を中心に研究を進めていく予定である。
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