研究概要 |
HMGB1はこれまで、核内においてクロマチン構造の安定化や転写調節に関与してきたことが知られているが、近年、炎症性刺激や細胞死に伴って細胞外に放出・分泌され、炎症メディエーターとして機能する他、細胞質においてウイルス核酸の認識に寄与することも報告されている。しかしこれまで個体レベルでのHMGB1の機能解析は行われてこなかったことから、本研究ではHMGB1コンディショナルノックアウトマウスを作製し、in vivoにおけるHMGB1の機能を解析した。メラノーマ細胞を移入すると肺に定着しコロニーを形成するが、このマウスに移入したところ、コロニー数が野生型と比して減少していることがわかった。詳細なメカニズムは不明であるため今後解析を進めていく予定であり、HMGB1のがんの排除における役割が明らかになるものと期待できる。また、HMGB1は炎症に関わることから、マクロファージにおいてHMGB1を欠損したマウスにLPSを投与したところ、野生型に比して高感受性を示すことがわかった。このマウスでは血中IL-1β, IL-18量が有意に増加していた。マクロファージにおいてオートファジー形成能が減弱しており、オートファジーがインフラマソーム活性を抑制することでLPS誘導性ショック時のIL-1β, IL-18産生量を抑制していることが示唆された。今後はこのような系を用いた検討を通じて、HMGB1を標的とした炎症性疾患・自己免疫疾患の治療応用に向けた分子基盤の確立を目指すと同時に、治療薬の開発応用に繋がることが期待される。
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