研究課題/領域番号 |
12J04268
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
櫻井 敦朗 京都大学, 大学院生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | AMPK / crypt culture / colon cancer |
研究概要 |
平成25年度は前年度に引き続き、大腸癌モデルマウスのの腫瘍から単離した陰窩を用いて、大腸癌発生メカニズムの解析を行った。昨年、腫瘍オルガノイドでPKM2をノックダウンすると、腫瘍の増殖が抑制されると報告したが、他のshRNAではオルガノイドの成長は抑制されなかったことから、昨年報告した結果はオフターゲット効果によるものだと結論付けた。 昨年のマイクロアレイの結果からはグルコース代謝以外の代謝経路の変化も示唆されていたことから、代謝経路を変化させることで腫瘍の成長を抑えられるのではないかと考え、AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)に着目した。AMPKの活性化剤であるA769662とAICARの両方で腫瘍オルガノイドの増殖が抑制されることを確認した。しかし、正常なオルガノイドもAMPKの活性化によって増殖が抑えられることを確認できたことから、AMPKの活性化は腫瘍特異的に効果があるわけではないことが明らかとなった。しかし、正常なオルガノイドにおいてはAMPKの活性化の効果はWnt経路の活性化剤であるGSK3bの阻害剤LiC1によってレスキューされたが、腫瘍オルガノイドではLiClによるレスキューは見られなかった。これらのことから、正常な小腸上皮細胞ではAMPKはWnt経路を抑制すること、そしてAMPKの下流で腫瘍特異的な代謝経路があることが示唆された。そして、AMPKを活性化した正常オルガノイドでWntターゲット遺伝子の発現量をRT-PCRで定量したところ、Wntターゲット遺伝子の発現が減少することが確認できた。このことからAMPKがWnt経路を制御して小腸幹細胞の維持に関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年、大腸癌発生に関与する候補遺伝子としてPKM2を見出したが、PKM2のノックダウンの効果はオフターゲット効果であったため、予想よりも研究が遅れた。しかし、AMPKの活性化が腫瘍の増殖を抑制することを見出した。さらにAMPKが正常小腸幹細胞でWnt経路を抑制するということを見出した。そのため、遅れは最小限だと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
AMPKと大腸癌発生の関係、AMPKと腸管幹細胞の関係を調べる予定である。具体的にはAMPKの活性をモニターするマウスから単離したクリプトのイメージングを行い、AMPKが腸管上皮細胞の恒常性の維持に関与しているかを調べる。
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