研究課題
申請者の研究の目的は、比較的質量比の大きい連星系からの重力波を用いることで、将来の重力波観測計画によって銀河中心に存在するブラックホール近傍の環境を明らかにすることである。特に観測される重力波が非常に弱いため、物理的な情報を引き出すためには理論によってあらかじめ重力波を正確に予測し、観測波形と相関をとることが不可欠である。連星系からの重力波を正確に計算するためには、まず波源である連星系の運度そのものを正確にモデル化する必要がある。理論的には連星系の質量比が大きい場合、連星系の運動は、質量の大きい星の作る重力場中を、質点が質点自身のつくる自己重力場による反作用力をうけながら測地線運動からわずかに摂動をうけつつ運動する、という描像でモデル化できる。そこで本年度は「重力波源である質量比の大きい連星系の運動を正確に理解するには、自己力をどの程度正確に理解する必要があるか」という課題設定をたてた。この課題に対して本年度は1)回転ブラックホール時空を円運動する質点の場合、2次の自己力の効果は現在計画されている重力波干渉計の範囲では無視できるほど小さいこと、2)回転ブラックホール時空を運動する質点は、動径方向運動の軌道周波数と、角度方向の軌道周波数が整数比になる"共鳴軌道"とよばれる特殊な軌道が存在すること、また共鳴の効果は重力波形に無視できない影響を与えうることを定性的に指摘した。
2: おおむね順調に進展している
本年度に設定した課題を達成し、その成果のすべてを査読付きの投稿論文として報告することができたため。
次年度は回転ブラックホール時空を運動する質点の共鳴軌道に重点的に注目し、放射される重力波が軌道運動に与えうる影響をより定量的に調べる。
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (10件) 備考 (1件)
Physical Review D
巻: 87 ページ: 024010-1-024010-15
10.1103/PhysRevD.87.024010
Progress of Theoretical and experimental Physics
(オンラインで掲載決定済み)
Classical and Quantum Gravity.
巻: 29 ページ: 155012-1-155012-17
10.1088/0264-9381/29/15/155012
http://www2.yukawa.kyoto-u.ac.jp/~isoyama/index.html