研究概要 |
前年度までに、4種の金属(Cu, Pt, W, Mo)にアブレーション閾値以下のフルーエンスで超短パルスレーザーを照射した時に形成される表面ナノ構造のSEM観察を終えた。Cu, Mo, W表面にはクラックの発生が確認されたが、Ptにおいてクラックは観察されなかった。本年度は、この結果を踏まえて、Ptとその他の金属の違いを議論するために、金属の光・熱・機械物性の観点から、電磁界分布シミュレーションおよび文献調査により議論した。また、アブレーション閾値以上のレーザー照射を行い、SEM観察を行った。 時間領域差分法によるレーザー照射時の電界分布の計算より、金属表面の窪みが起点となってクラック発生し、成長することがわかった。クラックが一定の長さ以上に成長すると、クラック端の電場強度は弱くなり、成長が止まることがわかった。これより、入射パルス数を変化させてもクラックの長さの分布が変化しないことを説明できた。文献調査により、Ptは他の金属と比べて延性・展性に富んでいることがわかり、これが原因でクラックが発生しないことがわかった。以上の結果を前年度の結果と合わせ論文化した。応用物理分野でトップレベルの国際学術誌であるApplied Physics Lettersに掲載された。 アブレーション閾値以上における入射パルス数の増加に伴うナノ周期構造の形成過程が明らかになった。表面に窪みを起点に散乱波が生じ、それにより表面プラズモンが励起される。それが入射波と干渉しあってナノ周期構造が形成されることが分かった。
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