研究概要 |
本研究は「味覚・嗅覚融合バイオセンサシステム」の実現を目指し,「辛味センサ」「対ダメージ臭高感度匂いセンサ」の開発によりセンサシステムに使用する客観情報を拡張しつつ,並行して行う「センサ情報統合解析手法」の開発との統合に繋げていく.現有のセンサを用いて行ったセンサ情報統合解析手法開発の先行実験において,現有のセンサにおける大小様々な問題が見つかり,まずは特に問題が深刻であった「甘味センサ」の改良・開発を喫緊の課題として取り組むこととした.現行の甘味センサは,応答原理が不明瞭であり,今回酸性条件下での挙動に問題がある事が判明した.また,高感度甘味料の甘味評価には用いることが出来なかった.判明した問題点をもとに,甘味センサの改良・開発方針を「現行甘味センサ改良」「高感度甘味料用センサ開発」と定めた.この二方針による本年度の成果として,現行甘味センサの応答原理の一部「膜組成中のベンゼン環の寄与」について明らかにすることが出来た.電解液中でのセンサ膜電位が負から正へと向かう条件下で,甘味応答値が顕著に表れる傾向にある事も明らかにした.また,高感度甘味料用センサとして,溶液中電荷の正負毎にセンサ開発を行い,対象物質に対して高い応答を示すセンサの開発に成功した.また並行して苦味センサの評価可能対象の拡張と応答原理解明も行った.辛味センサ及び対ダメージ臭センサは,ともにSPR免疫センサによる測定系を用いることとし,辛味の代表物質であるカプサイシンの抗体を用いて匂い物質バニリンの測定を行い,両センサ開発に向けたノウハウの収集に努めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
甘味センサの改良・開発を行い,糖類系甘味センサの応答原理の一部解明や高感度甘味料用センサ二種の試作に成功した.対ダメージ臭高感度匂いセンサについては,辛味センサとともにSPR免疫センサを測定系とし,代表的辛味物質であるカプサイシンの抗体を用いて匂い物質バニリンの測定を行うことで,両センサの本格的な研究開発に向けたノウハウ収集を行っており,進展は概ね順調と言える.また,味覚センサにおいて苦味センサの対象物質群拡張と応答原理解明にも成功している.
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今後の研究の推進方策 |
本年度の取り組みにおいて,糖類系甘味センサとしての現行センサの改良及び応答原理究明,高感度甘味料用甘味センサの開発に着手しており,次年度以降もこれを継続する必要がある.現行センサの改良については応答原理の一部を明らかにしており,高感度甘味料用甘味センサも溶液中での帯電の正負により二種類のセンサを開発し,それぞれ対象物質に対する高い感度を持たせることに成功している.これらを踏まえ,今後は現行センサの応答原理究明と改良,現状に高選択性を付与した高感度甘味料用甘味センサの開発を並行して推進する.対ダメージ臭高感度匂いセンサ及び辛味センサは,SPR免疫センサを測定系に用いる形で本年度に引き続き甘味センサ改良・開発に並行して行っていく.
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