研究課題/領域番号 |
12J04290
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
本多 良太郎 東北大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | ハイペロン核子相互作用 / ストレンジネス核物理 / 電子回路開発 / 検出器開発 |
研究概要 |
24年度の研究実施計画に於いて私は2つの異なった開発を計画していた。一つはbeamline fiber trackerの作成であり、もう一つは読み出し回路の開発である。 本研究ではΣp散乱事象を高統計で得るために、20 Mpions/spillという非常に高強度な2次パイオンビームを必要とする。fiber trackerはこれまでビーム強度を制限してたMWPCに替わってビームライン上に設置され運動量解析に使用される。fiber tracker無くしてはビーム強度を上げる事が出来ないため、本研究において必要不可欠な検出器である。6月にBeamline Fiber Tracker(BFT)を、12月にScattered Fiber Tracker(SFT)をそれぞれ開発した。これらをK1.8ビームライン上にインストールし性能試験を行うと同時に、production runの運動量解析にも使用された。BFT及びSFTのインストールによりJ-PARCE 10実験では12 Mpions/spillを達成した。BFT及びSFTの性能試験の結果、両方の検出共に20 Mpions/spillの条件下でも問題なく動作する事が分かった。ビームライン上の検出器に関しては24年度の実績により準備が完了した。 読み出し回路の開発はfiber trackerを読み出すためのMPPC用回路と、PMTを読み出すためのDRS4チップを用いた回路に分ける事ができる。前者においては試作基板ではあるがFPGA用のfirmwareを整備しproduction runで使用するための十分な時間分解能と転送レートを達成した。DRS4チップを用いたPMT読み出し用回路に関しては新規に基板を設計し、前年度内に実際に製造し納品する事ができた。本回路は波形を取り込むタイプのQDCであり、同時にQDCの他にhigh resolution TDC及びdiscriminatorも搭載し、一台の基板でQDC、TDC、及びdiscriminatorの全ての機能を提供する事が出来る。本研究では大強度ビームを取り扱うためトリガーレートも3k/spillと高くなる見込みである。本回路はデッドタイムが10μ秒程度と非常に短く高速なDAQ読み出しが可能となる。また、本回路にはアナログバッファが搭載されており、既存のQDCを使用する際に必要となるアナログディレイが必要なくなる。これにより長大なディレイケーブルは不必要となり大幅な経費削減となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
fiber trackerの読み出し回路の開発に関して遅れが生じている。本来は前年度中に試験基板ではなく実運用するための本格的な基板を設計する予定であったが、fiber trackerを前年度中にインストールするために既存の試験基板で読み出す必要があった。そのためのFPGAファームウェアの整備に時間がかかり、新しい基板設計を行う時間を設ける事が出来なかった事が遅れの原因である。また、ビームライン上のfiber trackerの開発に手一杯で、標的を囲うfiber trackerシステムの開発が進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
遅れが生じているfiber tracker読み出し回路の開発を今年度の上半期中に終了させる。そのために最も優先度高く設定し作業を行う。また、前年度納品されたPMT読み出し用回路のFPGAファームウェアの実装を行う。検出器の開発としては上半期で標的を囲うfiber trackerの試験機の開発とビーム試験を行う。上半期で全ての性能を試験を行わなければならないため、陽子ビームとパイオンビームを用いて異なった試験内容の実験を合計3回行う。その結果を基に下半期で標的周りのfiber trackerの実機の開発を行う。
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