研究課題
霊長類における苦味受容体の適応進化について、遺伝子多型解析から適応的な意義を考察する (研究1)、適応した採食特徴からその分子基盤を解明する (研究2) という二つのアプローチでの解明を行った。一つ目の研究では、ニホンザルの紀伊集団で地域特異的に生じた苦味受容体遺伝子TAS2R38の機能変異の進化的背景を探った。出産・育児による中断期間に入るまでに、表現型解析、TAS2R38の遺伝子周辺領域の配列解析およびコンピューターシミュレーションによる適応的意義の解明についての実験・解析はすべて終えた。復帰後は、これらのすべての結果をまとめた論文を投稿し、国際学術誌PLOS ONEに発表した。本論文は、ニホンザルの特定の集団で見つかった、苦味感受性変異は正の自然選択により集団中に急速に拡がったという大変興味深い内容であったため、研究者だけでなく報道関係者からの興味もひき、新聞5紙に報道され、さらには海外のウェブサイトでも紹介され、本研究の重要性が評価された。二つ目の研究では、霊長類の中でも葉食という特徴的な採食形態をもつ葉食ザル(コロブス類)を対象にして苦味受容体遺伝子解析を行うことで、葉食適応時に苦味受容体がどのように進化したのかを探った。復帰後も継続的に、野生種の糞から抽出したDNAをもちいて、苦味受容体遺伝子の配列解析を行った。これまでおこなった苦味受容体遺伝子の配列解析から、葉食ザルの苦味受容体遺伝子には浄化選択がはたらき、保存的傾向があることを明らかにした。この成果は国内学会で発表しており、現在は、より詳細な配列解析と並行して投稿論文の執筆にとりかかっている。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Biophysics and Physicobiology
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
PLOS ONE
巻: e0132016
10.1371/journal.pone.0132016