研究課題/領域番号 |
12J04304
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
松本 拓也 神戸大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | タンパク質修飾 / 固定化酵素 / ストレプトアビジン / セルラーゼ / SortaseA / バイオ燃料電池 / 配向固定化 / 同時固定化 |
研究概要 |
本研究では、タンパク質の配向性をナノスケールで制御可能にする新しい修飾法に焦点を当てて、研究を推し進めてきた。具体的には、Sortase A (SrtA)と呼ばれるタンパク質連結酵素を用いて、部位特異的にタンパク質を連結する手法の開発・応用を行ってきた。SrtAはL,PETGから成る特定のアミノ酸配列を認識し、グリシンの繰り返し配列からなるアミノ酸配列のN末端を連結することから、これらの二種の配列をタンパク質上に介在させることで目的タンパク質をつなぎ合わすことができる。当該年度において、ストレプトアビジン(Stav)のC末端側にLPETG配列を付与した組み換えタンパク質を発現精製し、前述のSrtAの反応機構を利用することで、Stavと目的タンパク質との複合体を形成することに成功した。また、Stavが元来もつビオチンとの強固な親和性を利用することで、Stavをタンパク質固定化の足場と考え、2種類のタンパク質を同時に固定化する手法の開発にも成功した。具体的には、緑色および赤色蛍光タンパク質の同時固定化に成功した。また、グルコース酸化酵素およびペルオキシダーゼを同時に微粒子表面に固定化することによって、溶液中のグルコースを検出できる機能性微粒子の開発に成功した。 上記研究内容と同時にバイオ燃料電池に関する研究も進行してきた。本研究では他に例がないでんぷんなどの多糖を燃料としたバイオ燃料電池の開発を目指した。デンプンを分解する酵素であるα-アミラーゼおよびグルコアミラーゼ、グルコース酸化酵素を電極に同時に固定化することにより、デンプンを直接燃料とできるバイオアノードの開発を行った。テトラチアフルバレンを電子メディエータとして、カーボンペースト電極上に3種類の酵素と同時に練り込むことによって、デンプンの糖化と酸化を同時に行う電極を開発した。実際に、モデル基質として、粉末状にした白米を燃料とすることで、開回路電圧:0.522V、最大電力密度:99.0μW cm^<-2>を達成することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当該年度において、SrtAを用いたタンパク質固定化技術を駆使することで、目的としていた複数の酵素を同時に固定化した機能性微粒子の開発に成功した。また、バイオ燃料電池の開発においても、でんぷん質バイオマスを直接酸化できる機能性バイオアノードの開発に成功した。今後、これらの技術の複合化や汎用例の実証に技術展開をしていく予定であり、当初の計画と比べても順調に研究を遂行することができた。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに、多糖を直接酸化可能なバイオアノードの開発に成功することができた。しかしながら、得られたバイオ燃料電池の性能は十分ではなく、性能向上に向けた開発アプローチが必要になる。そこで、本研究で開発した、タンパク質の配向を制御しながら、かつ同時に固定化できる技術を応用する。酵素を電極に固定化する際に、配向を制御することで、酵素の活性を維持したまま固定化できることが期待できる。それにより、電極に固定化することによる酵素の失活を抑制でき、電極の性能や安定性の向上を見込める。また、本研究においてはStavをタンパク質固定化の足場とすることで、複数種の酵素を固定化できることから、多機能性を有したバイオアノードの開発も可能になると考えられる。
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