本研究では、タンパク質の配向性をナノスケールで制御可能にする新しい修飾法に焦点を当てて、研究を推し進めてきた。前年度において、ストレプトアビジン(Stav)のC末端側にLPETG配列を付与した組み換えタンパク質を発現精製し、Sortase Aの反応機構を利用することで、Stavと目的タンパク質との複合体を形成することに成功した。また、Stavが元来もっビオチンとの強固な親和性を利用することで、Stavをタンパク質固定化の足場と考え、2種類のタンパク質を同時に固定化する手法の開発にも成功した。該当年度においては、本技術を応用し、エンドグルカナーゼおよびβ-グルコシダーゼの2種類のセルラーゼを同時固定化することで、セルロースを高効率に分解できる固定化酵素の調製を試みた。Stavを足場とすることで、一つの粒子に2種類のセルラーゼを同時に固定化することに成功した。調製した粒子は、別々の粒子にそれぞれのセルラーゼを固定化した場合に比べて、効率よくセルロース(リン酸処理したもの)を分解することができた。 上記研究内容と同時にバイオ燃料電池に関する研究も進行してきた。具体的には、デンプンを分解する酵素であるα-アミラーゼおよびグルコアミラーゼ、さらに、グルコース酸化酵素を電極に同時に固定化することにより、デンプンを直接燃料とできる新規バイオアノードの開発を行った。また、電池性能の向上を目的として、グルコースを複数の酵素で多段階酸化できる電極の開発を行った。具体的には、電極上にグルコース脱水素酵素、グルコン酸脱水素酵素およびジアフォラーゼを固定化することで、グルコース1分子あたり4つの電子を取り出すことのできる電極を作製し、電池として組み立てた際、グルコース脱水素酵素およびジアフォラーゼを固定化した従来の電極と比較して、最大で約1.6倍の電力を取り出すことに成功した。
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