研究課題/領域番号 |
12J04305
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
江藤 真由美 九州大学, 大学院・理学研究院, 特別研究員(DC2)
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キーワード | ケイ酸錯体 / イネ科植物 / バイオミネラリゼーション |
研究概要 |
イネ科植物によるケイ酸(Si(OH)4)の特異的な重合抑制メカニズムの解明と特異的に濃縮されるケイ酸と金属元素間の相互作用の有無に関して研究を行った。本年度では、まずイネを水耕栽培する際の金属八二素の取り込みに関するケイ酸の影響を評価した。次に、ケイ酸の特異的な濃縮メカニズムとして、二酸化炭素共存下でのケイ酸の重合実験をモデル実験を組み立てることで研究した。まず、ケイ酸と金属元素間の相互作用では、亜鉛(Zn)に関して興味深い結果が得られた。ケイ酸を水耕溶液に共存させた場合、ケイ酸を含まない系に比べて、水耕溶液中のZnの減少量が多いことが明らかとなった。これは、ケイ酸が共存することで植物中にZnが取り込まれやすくなったことを示している。先行研究において、アルカリ性条件下においてZn-ケイ酸複合体が生成することが見出されている。本研究で得られた結果は、植物が生育する様な中性条件でもZnとケイ酸問に相互作用があることを示唆している。現在、モデル実験を組み立て、Znとケイ酸間の反応について研究を行っている段階である。 次に、ケイ酸の特異的重合抑制メカニズムを研究した。イネの導管溶液中では、ケイ酸が過飽和状態であるにもかかわらず、ほぼ100%のケイ酸が単量体として存在している。これは、導管中でケイ酸の重含反応を抑制する因子が存在することを示している。本研究では、イネの呼吸の際に分泌される二酸化炭素が関係している可能性があるという仮説を立て研究を行った。二酸化炭素共存下では、ケイ酸の重合が抑制されることが分かった。イネの導管溶液中のケイ酸濃度とほぼ等しい300ppm(as Si)程度の溶液に二酸化炭素を通流することで、約80%のケイ酸が重合せずに存在することが明らかとなった。この時の反応pHは6付近であり、イネの導管溶液のpHとほぼ一致する。この結果は、導管溶液中において、二酸化炭素によりケイ酸の重合が制御されている可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二酸化炭素共存下でのケイ酸の重合反応では、ほぼ期待した結果が得られた。次年度はさらに研究を進め、NMR等を利用し、ケイ酸と二酸化炭素問の相互作用を明らかとする。ケイ酸の金属イオン間の相互作用では、Znの系でケイ酸がZnの取り込みに影響している結果がえられた。さらに、イネ科植物中でプラントオパールとして沈殿したケイ酸と各金属元素問の相互作用を観察するために、各組織をSEM-EDXにより観察した。結果として、各元素とも測定限界以下であったため、次年度は水耕溶液中の金属元素濃度を変化させてより濃縮させたイネを栽培することを予定している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究において、プラントオパール中への金属元素の濃縮の有無を確認することを研究の目的の1つとした。通常栽培したイネでは、金属元素濃度が低いために濃縮の有無が観察できなかった。そこで、次年度ではイネを栽培する場合に、金属元素濃度を増加させた水耕液を用いてイネを栽培することを予定している。次に、二酸化炭素共存下でのケイ酸の重合反応に関しては、Si300ppm程度のケイ酸溶液では、ケイ酸の重合を抑制するという結果が得られた。さらに高濃度のSi溶液を用いて実験を行ったが、実験Si濃度に応じてpHが若干変化するため、各Si濃度の系での結果の比較が困難であった。そこで、次年度では、緩衝液を用いる等して各Si濃度条件でのpHを一定にすることを予定している。さらに、現在二酸化炭素を封入するNMR管を作成中であり、このNMR管を用いて二酸化炭素とケイ酸管の錯形成の有無を確認する予定である。
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