研究課題
特別研究員として一年目となる昨年度は、二度にわたってカリフォルニア大学と共同で国外フィールドで調査を行い、自らの研究課題達成に必要なデータセットを着実に集積していった。そして、昨年度は以下の3つのテーマに重点をおいて研究を進めていった。1.「動物装着型小型カメラによる餌生物の特定」雌キタゾウアザラシの頭に小型カメラを装着し、中深層性餌生物の撮影・特定を試みた結果、Myctophidae(ハダカイワシの仲間)及びBathyagidae(ソコイワシの仲間)の撮影に成功した。両種とも中深層に生息する生物であり、雌キタゾウアザラシの主な餌種として考えることができる。本手法で撮影した餌種の情報を含む学術論文は共著として国際誌に受理された。今後も、その他の餌種を特定するために、小型カメラの装着を予定している。2.「中深層性餌生物の分布、及びその現存量の継続的モニタリング」本研究計画の目標の一つである「アザラシの採餌記録から、中深層性餌生物の現存量の季節・年・地域間変動を捉える」ために、雌キタゾウアザラシに顎加速度記録計を装着した。現在、研究課題達成のため取得したデータの解析を適宜進めており、時空間的変動を捉えるために、来年度も同様に顎加速度記録計を装着し、中深層性餌生物の分布、及びその現存量の継続的モニタリングを行う予定である。3.「回遊中キタゾウアザラシの遊泳コストの算出」海棲哺乳類にとって効率よくエネルギーを獲得するためには、遊泳コストと餌獲得量のバランスを如何にして調整するかが重要となってくる。エネルギー獲得効率は中深層性餌生物の種類・分布(i.e.餌環境の指標)、及びその現存量(i.e.アザラシが獲得し得るポテンシャル餌量の指標)と大きく関わってくるため、上記した2つのテーマと併せて採択者の研究テーマとして重要である。現在、「効率よくエネルギーを獲得するための遊泳行動」に関する論文二本を近日中に国際誌に投稿するため、解析・論文執筆を進めている。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、研究課題達成に必要なデータセットを着実に集積していったと共に、アザラシの頭に装着した小型カメラで彼らの餌種を特定することに成功し、その成果が共著論文として国際誌に受理されている。昨年度は残念ながら筆頭著者での論文投稿には至らなかったが、現在、アザラシの採餌行動の継続的モニタリングとバランスを取りつつ、アザラシの採餌行動と遊泳行動を併せたアザラシのエネルギー獲得効率に関する論文を執筆中であり、近日中に国際誌への投稿を予定している。
キタゾウアザラシの採餌行動の継続的モニタリング、引いては中深層性餌生物の種類・分布・現存量の継続的モニタリングを行うために、今後も顎加速度計及び小型カメラのキタゾウアザラシへの装着をカリフォルニア大学と共同で行う予定である。また、本研究の最終目的である「海洋表層変動がキタゾウアザラシの主な餌種の現存量や分布に与える影響を季節・年・地域間で比較し、評価する」ために必要不可欠な海洋表層変動を衛星観測データから再構築する手法を2年目中に獲得することを予定している。
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Functional Ecology
巻: (Early View)
10.1111/1365-2435.12083