研究概要 |
本研究は、異種材料間での電荷移動に着目したデバイス応用に主眼を置き、キャリア移動度や高速応答性能等の優れた高性能有機半導体素子を開発することを目的としている。昨年度は、有機半導体材料と金属エッチング剤との間に電荷移動を生ずるためのエネルギー関係に着目した研究を行い、金のウェットエッチによって数ミクロンサイズの微細なトップコンタクト型電極を作製できる技術を開発した。トップコンタクト電極は、電荷注入領域1半導体活性層間の接触抵抗が小さいという利点を有する一方で、微細化が困難であったが、この技術はこの問題を解決するものである。実験では、ヨウ素系エッチング剤Aurum S50790(関東化学製)とフォトレジストを組み合わせ、金電極の微細パターンを有機半導体薄膜2,9-Didecyldinaphtho[2,3-b:2',3'-f]thieno[3,2-b]thiophen(C10-DNTT)上に形成した。この電極作製技術を用いて作製したデバイスは、5cm^2/Vsに達する高いキャリア移動度と106以上の高いオン・オフ比、約200Ωcm程度の非常に低い接触抵抗値を示し、このエッチング剤の還元電位に対して有機半導体の酸化電位が十分に高ければ、両者の間で電荷移動が起こらず、デバイス特性に深刻な影響を与えないことが判明した。また、チャネル長2μmの微細素子の高速応答性能を評価した結果、遮断周波数が約19MHzに達する優れた特性を示した。上記のように、この技術は、優れた周波数応答性能を示す有機電界効果トランジスタの作製を可能にするのであり、高速演算性能を有する有機エレクトロニクスの素子の開発につながっていくものである。
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