研究課題/領域番号 |
12J04336
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
横山 剛 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | インド仏教 / アビダルマ / 中観 / 範疇論 / 五蘊 / 五位 / 中観五蘊論 / 入阿毘達磨論 |
研究概要 |
本研究の目的は、『中観五蘊諭』を通じて、中観派のアビダルマ範疇論に対する理解を明らかにすることであり、更に五蘊を軸にインド仏教における範疇論の史的展開を整理することで、その中に同論の範疇論を位置づけることである。研究を構成する、『中観五蘊論』研究、その基礎研究である『入阿毘達磨論』研究、そして五慈を軸とする範疇論の研究、それぞれに関して、平成25年度の研究成果を報告する。 4月から12月は前年度に引き続き、米国のワシントン大学で研究活動を継続した。『中観五蘊論』研究では、和訳と蔵訳批判校訂本の作成を進めた。また、有部的な教説と中観派的な教説を分類し、特に両者の折衷に注意を払いつつ、同論における範疇論の理解について考察した。『入阿毘達磨論』研究では、同論の有部アビダルマの史的発展における位置づけを明らかにするために、前年度までの『倶舎論』との先後関係の考察をさらに深め、普光『倶舎論記』における根拠の妥当性を検討した。さらに『入阿毘達磨論』の原題を議論する中で、『品類足論』との関連を考察した。五蘊を軸とする範疇論の研究では、初期経典からアビダルマに至る過程での五蘊の機能の変化を考察した。また、五位との比較を通じて、範疇論の骨格としての五組の台頭における修道論的な意義について考察した。以上の研究成果に関しては、一時帰国した際に、学会において発表し、論文に纏めて出版した。 ワシントン大学での活動を12月で終え、最後の三ヵ月間は、オーストリア科学アカデミーにて、研究活動を行った。滞在中は、同研究所の研究員である赤羽律博士と『中観五蘊論』の研究会を設け、中観派的な教説を中心に同書を精読することで、中観思想の専門家である同博士の指導を賜った。以上の集中的なテキスト研究により試訳が完成し、同論が後代の論書に与えた影響に関して新たな発見があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に引き続き、『入阿毘達磨論』研究における考察を深め、その成果を学会で発表し、論文としで出版することで、同論の研究を凡そ終了することが出来た。また『中観五蘊論』の試訳を完成したことは、本年度の大きな成果である。五蘊を軸とする範疇論の研究では、史的展開のアウトラインを描くことに成功し、五位との比較を通じて、研究を前進することが出来た。五蘊の担う機能の分析に関しては、細部において不十分な点を残すが、最終年度の早い段階で、この点に集中的に取り組み、遅れを取り戻したい。以上の研究成果をうけて、現時点で報告者の研究は概ね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度に相当する来年度は、現在進行中である蔵訳批判校訂本の作成に早い段階で集中的に取り組み、7月末までに作業を完了し、和訳と合わせ、テギスト研究を完成させる。『中観五蘊論』研究では、これまでの研究成果を基盤として、同論書の著者問題に取り組みたい。五蘊が担う機能の変遷に関しては、細かな点に関する分析・考察を進め、範疇論の展開史をより緻密に描き出す。また、最後の三ヵ月は、これまでの研究成果を総合し、本研究を完成させるための時間として確保したい。
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