研究課題/領域番号 |
12J04356
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
坂部 綾香 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | メタン / 森林 / 地球温暖化 / 北方林 / ガス交換 / 気象 / 水田 / 温帯林 |
研究概要 |
森林生態系におけるメタン動態の解明に向けて、桐生水文試験地(滋賀県南部、ヒノキ林)において、生態系スケールを対象とする簡易渦集積法(REA法)、渦相関法(EC法)によるメタンフラックス観測、プロットスケールを対象とする土壌チャンバー法によるメタンフラックス観測、さらに、5高度のメタン濃度プロファイル観測を行った。いずれの手法も、初年度に確立した自動測定システムによって連続してデータを取得している。 林内の複数地点で行った土壌チャンバー法による観測から、林内のメタンフラックスの空間不均一性を明らかにした。さらに、REA法によるメタンフラックスの観測結果から、ヒノキ林が生態系スケールで、メタン吸収源であるのか、放出源であるのか、そのレンジ、季節変化がどのようであるかを明らかにした。それらの結果を統合し、プロットスケールでのヒノキ林内のメタンフラックスの空間不均一性を把握した上で、生態系スケールのメタンフラックスの変動要因を考察した。さらに、林内の大きなメタン放出源である湿地からのメタン放出が、どれほど生態系スケールのフラックスに寄与しているか解析を進めた。 アラスカ試験地(アラスカ中央部、クロトウヒ林)において、5月11日から9月12日までREA法、EC法、土壌チャンバー法によるメタンフラックス観測を行った。 2012年に水田サイト(つくば市)において得られた複数の微気象学的手法によるメタンフラックスの比較観測から、REA法の問題点を探り、EC法に比べREA法によるフラックスが過小評価される条件があることが明らかになった。さらに、REA法のフラックス係数式中の実験係数の不確定性について、論文を執筆し、現在投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の主な研究計画は、桐生水文試験地とアラスカ試験地において、簡易渦集積法、渦相関法、土壌チャンバー法、プロファイル法によるメタン動態観測を継続し、連続データを取得することと、可動式REA法メタンフラックス測定システムを設計・製作することであった。両サイトで連続データを取得できたので、概ね計画通りに進展していると判断した。また、REAシステムを森林2サイト、水田1サイトで展開できたので、可動式REAシステムの導入も行うことができたと判断した。昨年度に取り組めなかった簡易渦集積法の測定精度向上のためのプログラムの改良は、アラスカサイトで実行し、データを取得することができた。
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今後の研究の推進方策 |
桐生水文試験地、アラスカ試験地におけるメタン動態の観測を継続する。観測結果を順次論文として発表する。桐生水文試験地において、土壌チャンバー法によるメタンフラックスの観測結果を論文にまとめ、現在投稿に向けて準備中である。REA法による生態系スケールとチャンバー法によるプロットスケールでのメタン動態を総合的に解析した論文を執筆し、投稿する予定である。アラスカ試験地での観測結果について、論文を執筆する。さらに、水田サイトでの複数の微気象学的手法によるメタンフラックスの比較観測から明らかになったREA法の問題点について、論文を執筆する。
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