研究課題
本研究は日本人HIV-1慢性感染者のHIV-1のゲノムを解析することで、日本におけるHLA-associated polymorphism (HLA-AP)を明らかにし、日本人集団と他地域、他人種集団を比較することで、HLA class I型の多様性の違いがHIV-1の進化に与える影響を明らかにすることを目指している。これまで、無治療の日本人HIV-1サブタイプB慢性感染者430名を対象として、計284個のHLA-associated polymorphism (HLA-AP)を同定し、感染者の血中ウイルス量がPol領域におけるHIV-1アミノ酸変異の出現数と有意に逆相関しており、特にHLA-B^*52:01関連アミノ酸変異と有意に逆相関していることを明らかにした。続いて、HLAサブタイプ問のHLA-APをPhylogenetically-corrected interaction testにより比較解析した結果、C^*03では9箇所のうち3箇所、C^*14では14箇所中のうち5箇所でHLA-APの選択の強さに統計学的に有意な差がみられた。これらの結果によって、ペプチド結合部位の外側のアミノ酸の違いが、ペプチドとの結合能に影響を及ぼしている可能性が示唆された。続いて、本研究で同定されたHLA-APをInternational HIV Adaptation Collaborativeコホート(IHACコホート)と比較解析した。その結果、日本人コホートで同定されたHLA-APのうち、188個(66.2%)ものHLA-APがIHACでは同定されていないことが明らかになり、さらに共通して分布するHLA型に絞って比較解析したところ、71個のHLA-APが両コホート間で選択される強さに明確な差があることが明らかとなった。これらの結果により、HLA拘束性免疫以外の免疫圧の影響、またコホート間の個々のHLA分子の発現量の違いや集団内HIV-1の共通配列の違いが、同じHLA型によって選択されるHLA-APのコホート間の差異に影響していることが示唆された。本研究は、それぞれの集団内のHIV-1の進化がHLA型の多様性の違いによって影響を及ぼされていることを示している一方で、HLA型以外の何らかの因子もHLA-APの選択に関与している可能性を示した。
2: おおむね順調に進展している
日本人HIV-1 clade B慢性感染者の解析により、284個ものHLA-associated polymorphism (HLA-AP)を同定し、さらにPol領域のHLA-APの蓄積が感染者の血中ウイルス量に相関していることを明らかにした。さらに計画されていた共同研究により、サブタイプ間およびコホート間のHLA-APの詳細な比較解析を行うことができた。また、これまでの結果をまとめ、国際誌に発表することができた。以上により、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
サブタイプ間およびコホート間におけるHLA-APの統計的手法な比較解析により、HLA class I分子以外にHLA-associated polymorphismの選択に影響を与える未知の因子が存在している可能性が示唆された。そのため、感染者の細胞傷害性T細胞の機能解析やHLA class I分子の発現量を詳細に調べる予定である。さらに今年度行われたHLAサブタイプ間の比較解析により、HLA分子のペプチド結合部位の外側にみられるアミノ酸の置換が、ペプチドとの結合またはTCRとの相互作用に寄与している可能性が示唆された。そこで、HLA-C^*03およびC^*14に注目し、既報のエピトープペプチドに対する結合能の比較解析を行っており、引き続きHLA-C^*03およびC^*14のサブタイプ間の違いを明らかにしていく予定である。
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Journal of Virology
巻: 88巻 ページ: 4764-4775
10.1128/JVI.00147-14
http://www.caids.kumamoto-u.ac.jp/data/takiguchi/viral/gyouseki/insei/insei-gyouseki-chikata.htm