研究課題/領域番号 |
12J04404
|
研究機関 | 公益財団法人東洋文庫 |
研究代表者 |
小林 晃 公益財団法人 東洋文庫, 研究部, 特別研究員(PD)
|
キーワード | 南宋 / 公田法 / モンゴル / 宗族 |
研究概要 |
平成25年度は平成24年度から引き続き、南宋後期における対モンゴル防衛政策と、南宋末期に施行された公田法との関係について研究を深めるとともに、その内容を国内外の学会で口頭報告し、さらには研究論文として学術雑誌に投稿するに至った。公田法とは長江デルタ地帯の地主の所有田を南宋王朝が強制的に買い上げ、国有田として整備したというもので、1952年に周藤吉之氏によって財政難に苦しむ南宋王朝が軍費を賄うために行った政策いう視点が示されて以来、新たな視点からの研究はほとんどなされてこなかった。これに対して申請者は、公田法がとくに最前線でモンゴルと対峙した軍隊の食糧を供給するための政策であったことに注目し、これを南宋王朝が食糧を通じて前線の軍隊をコントロールせんとして実施した政策であったという新たな視点を提示したのである。この研究内容は2013年6月22日の2013年度三田史学会大会、同年9月3日に中国の北京大学で開催された"宋代政治史研究的新視野"国際学術研討会、同年11月30日の第162回宋代史談話会、同年12月15日の2013年四国東洋学研究者会議において報告された。公田法で生み出された膨大な公田は、次の元朝・明朝で「官田」として把握され、南北中国の統合のための重要な財源となった。本研究は南宋・モンゴルによって40年にもわたって持続された南北対立が、その後の南北中国の統合にどのような影響を与えたのかという問題解明に大きな手掛りを与えるであろう。 また上の研究と並行して、南宋の政界で宰相の一族として繁栄した明州(現在の浙江省寧波市)の史氏一族についての研究も進めた。史氏一族は南宋末期には急速に衰退したが、消滅せずに元朝・明朝を生き抜くことになる。この史氏一族の南宋後期における衰退過程を追うことで、南宋・元の王朝交替やその過程の政治史を明州という一地域のミクロな視点から見定めることも可能となるであろう。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成25年度に行った学会発表は、当初計画していた研究内容の半分に当たる内容になっている。しかも公田法は残りの半分にも密接にかかわる研究内容であるため、計画以上に研究は進んでいると評価できると思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度は上でも述べたように、主に南宋後期の政界で活躍した史氏一族について研究を進めることになる。その際には『四明文献』という申請者がかつて留学中に発見して学界に報告した史料の読解が重要な手掛りとなるはずである。また平成26年度は申請者の博士論文の出版申請を行うことも考えている。博士論文提出時よりも何本か論文を追加する予定であるため、研究計画では元朝にまで踏み込む予定であったが、論文の執筆状況の如何によっては研究の進行を南宋最末期までに止める可能性も出てきている。ただしその場合も、可及的速やかにその内容を論文として発表できるように、研究は同時並行的に進める予定である。
|