研究概要 |
本年度はカメルーン共和国およびコンゴ共和国, コンゴ民主共和国において, 身体障害者の生計活動とケアに関する計6か月間にわたる長期のフィールドワークを実施した。またカメルーン共和国およびコンゴ共和国の障害者に関する法律文章や統計資料などを当該国の社会福祉問題省を訪問し収集した。特に, コンゴ共和国とコンゴ民主共和国では公的サービスが著しく欠如しているなか, コンゴ川を挟んで発展してきた首都キンシャサ市とブラザビル市では, 身体障害者自身が組合を発足し, 二国間の流通を担っていることが明らかになった。このように, 障害者の生業となる資源のなかには, 空間的に広がりをもっていることで生まれるものがあり, 国家や地域社会を越えた障害者の生存維持基盤の解明へと繋がった。これらの研究結果を踏まえ, 国家の枠を超えた障害者の移動を含めた「障害と開発」のパラダイムづくりに向けて, 研究会などで検討を進めている。 本年度6月は, イギリスのリヴァプール大学で開催された第10回国際狩猟採集民会議(CHaGS10)において, カメルーン熱帯林の農耕民・狩猟採集民社会における障害者のケアについて口頭発表をおこなった。加えて日本アフリカ学会編の『アフリカ学事典』に「アフリカの障害者」に関する論文を寄稿した。また昨年度発足した日本貿易振興機構アジア経済研究所(JETRO-IDE)の『アフリカの障害者一障害と開発の視点から』研究会(主査 : 森壮也[アジア経済研究所])において, コンゴ川流通を担う障害者の生計に関する発表をおこない, その内容をまとめた報告書を提出した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である平成26年度は, これまでの研究成果を単著としてまとめて出版することを目指す。加えて, 調査地への研究成果還元のために, 英文でレポートを執筆し, これを用いてカメルーン共和国およびコンゴ共和国とコンゴ民主共和国において, 障害者当事者・NGO団体・政府関係者と検討会を開催することを予定している。
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