本研究は(1)慣習法の概念の形成過程および位置づけの変化の再検討、(2)司法制度の内外における慣習法知識の教育、(3)裁判所におけるローカルな知識についての研究という三つの柱を持ち、研究初年度には、研究計画の精緻化、本研究課題に関連する先行研究の検討、現地調査の実施、帰国後、日本語での成果発表に向け得られたデータの分析を行う計画であった。今年度はこの計画通り、国内においての文献調査、インドネシアにおける現地調査、および国内でのデータの分析を行った。また、在外研究に向けた準備を進めた。具体的に行った作業は以下の通りである。 博士論文を中心とする、採用までの調査成果を整理し、今後の研究計画の再検討を行うとともに、出版に向けた準備を進めた。この一部は、2014年1月に開催された東文研・ASNET共催セミナーにおいて「裁くことと裁かないことの民族誌」として発表した。 8月29日から9月5日までは、インドネシアの慣習法概念に関する調査のため、インドネシア大学図書館、最高裁判所図書室における資料収集を行った。現在のインドネシアにおける慣習法概念の位置づけを論じるために必要な、慣習法の解釈が争われた最高裁判例などの資料が得られた。 また2014年度9月から11月にかけて、コーネル大学ロースクールのClarke Program in East Asian Law and Cultureの訪問研究員として在外研究を行うため、受け入れにともなう手続きを開始した。
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